北海道新幹線「札幌延伸」工期と費用で前途多難 北陸新幹線敦賀開業は1年遅れ、工費は2倍に

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数字を公表しない理由は、「前提の置き方次第で今後発生する費用が変わる」(同)ためである。これについては「そういう数字ではない」としている。例えば、トンネル掘削で生じる土砂に自然由来の重金属が含まれている場合、どのような対策を取るかによって金額が変わってくるという。

有識者会議では、前提条件をきちんと詰めるとともに、費用の増加要因についてもほかにないかさらに検討が必要ということになった。こうした精査を踏まえて金額が示されることになりそうだ。

もし工事費用が増加するとしたら、国の2023年度予算案に計上される見通しだが、整備新幹線の建設費用は国のほか、地方公共団体も負担することになっている。つまり、工事費用が増えると道も追加負担を強いられることになる。

開業の遅れに懸念

工事費用よりも気になるのが工期である。いくつかの工区で工事の遅れが表面化している。たとえば札幌と小樽の間にある札樽トンネルは、トンネル発生土に自然由来の重金属が含まれていることが判明して発生土の搬入先の決定に時間がかかり、着工が3年遅れている。また、倶知安町とニセコ町の間で工事中の羊蹄トンネルでは、掘削ルート上で巨大な岩石が見つかった。現在はこの岩を取り除くために本坑の脇に小型のトンネルを建設中だ。

北海道新幹線・豊野トンネル
国縫トンネルのすぐ隣では豊野トンネルが工事中(記者撮影)

有識者会議では工期を短縮する方法についても説明が行われているが、もし開業時期が遅れると、2031年度に経営自立を果たすというJR北海道の目標の達成もままならなくなるほか、並行在来線の存続問題も影響を受けることになる。

中野参事官は「2030年度末まで8年ある。まだ時間はある」としているが、もし工事費の増加だけでなく工期延長の可能性があるなら、早めに公表してそれに備えるべきだ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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