東洋ゴム、「免震データ改ざん」の深刻度 2007年の不正の教訓は生かされなかった

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しかも、この問題が発覚したのは、その担当者が交代した2014年2月。新担当者が業務を引き継ぎ、「何かがおかしい」と感じ取った。が、それから2015年2月まで、丸1年間も不適合な製品が納入されていたのだ。これに対して会社側は「過去のデータを追跡したりして、何が問題かを突きとめるのに、1年かかった」と弁明している。

東洋ゴムだけではなく、認定した行政などの責任も重い。

免震ゴムのように建築物に使われる部材は、国交省の大臣認定を受ける必要がある。メーカーが認定を受けるには、国交省の決めた指定性能評価機関による、性能評価書を発行してもらわなければならない。今回で言えば、日本免震構造協会である。評価した評価機関、認定した国交省も、無罪放免とは言えまい。

日本免震構造協会の幹部は「基本的には技術者の倫理観があるという前提。書類全体でうまく整合性をとり、偽装されると、見抜くのは難しい」と打ち明ける。また国交省の住宅局建築指導課は「うちはきちんとやっている。ただ免震ゴムに関しては、サンプル調査までしたことはない」と説明する。

安全性に懸念ある場合のみ、交換する

今回の場合、大臣認定を受けた後でも、製品出荷前の検査の段階で、本来であれば不適合で基準値から外れていたバラつきの値をデータ上で修正し、出荷にこぎ着けたという。認定取得のための意図的なデータ改ざんについても、「推定だが、担当者は、予定通り出荷することを優先させたのではないか」(山本社長)と、納期の遅れを恐れたことからくる行動だった可能性が高い。

耐震・免震構造に詳しい、北村春幸・東京理科大教授は次のように指摘する。

「免震ゴムは加硫部分(圧力・温度・時間)のコントロールが非常に難しい。どうしても製造でバラつきは出てしまうようだ。問題なのは、不良品を出荷しないという品質管理を、メーカーが怠っていたこと」

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