日本で創造的破壊を生むために政府にできること シュンペーター理論は経済政策の指針となる

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イノベーション阻止を企てるこうした団結に対し、政府には二重の役割を果たすことが求められる。

1つは、競争と新規企業の参入を保証することだ。競争政策の目的も、腐敗撲滅・ロビー活動規制政策の目的も、ここにある。もう1つは、失業時の困窮から労働者を守ることである。

シュンペーター理論の重要な示唆

創造的破壊のパラダイムというレンズを通して見ると、経済成長のプロセスに関してさらに2つの重要な側面が浮かび上がってくる。

■キャッチアップ体制からの転換

第1は、模倣と技術の最前線におけるイノベーションの問題である(技術の最前線とは、技術開発が最も進んだ段階を意味する。言い換えれば、今現在最も効率的な技術である。言うまでもなく、時間の経過とともにイノベーションによって最前線は前進する)。

生産性の向上と技術の進歩を生み出す方法は2通りある。1つは模倣だ。技術を真似すればその産業分野のベストプラクティスに適応し、最先端技術を習得できる。

もう1つは自らイノベーションを創出することである。イノベーションは、すでに技術の最先端にいて模倣すべき先行者を持たない企業に飛躍のチャンスをもたらす。

本書で論じるように、資本蓄積とキャッチアップによる成長に有利な制度と政策を採用した国は当初は高度成長を遂げるが、イノベーション主導の経済へと制度と政策を転換することが難しい。

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