新幹線は地方創生に役立っているのか 利益を大都市に吸い取られるだけ?

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軽井沢や南魚沼市のケースでもわかるように、エリアの特色を活かし、「どうしたら大都市圏との競争でも優位にたてるのか」、という明確なターゲット思考が重要です。つまり、突き詰めれば、「その場所に行くだけの、明確な目的づくり」が求められているのです。

これに対し最悪なのは、単に新幹線を引いてしまうケースです。一般的な交付金の対象になるような「駅前広場整備」や「区画整理」をして、補助金が出るからといって、観光での誘客キャンペーンを展開してしまいます。こうした「従来型の模範解答」をやってしまうと、間違いなくその地域は埋もれて、衰退してしまいます。

その2 新幹線開通で逆に不便になる、地域内交通をどう再構築できるか

新幹線ができると、都市間の移動は目に見えて便利になります。反面、地域内での公共交通が不便になっていくという、厳しい現実があります。

新幹線に並行する在来線などは、第3セクター方式で切り離されることが珍しくなくなります。大抵は赤字路線のため、運賃は従来よりも1.2倍〜1.5倍程度も値上がりします。さらに特急路線の廃止、JR関連バスの再編なども行われ、新幹線以外の地域内公共交通利用は、ますます高コストかつ不便になります。

そのため、新幹線駅が近隣にない周辺地域の活用という点では、「新幹線+在来線」だけでなく、「新幹線+アルファ」でいかに来てもらえるか、という活用案を考える必要があります。

例えば、新幹線駅から離れた地域の例としては、青森県八戸市において、郊外の生鮮卸売市場の観光拠点化で成功している「八食センター」があります。八食センターでは、八戸駅からの「八食100円バス」を運行し「新幹線+バス」でのルート開発で観光誘客へとつなげています。さらに市街地を結ぶ八食200円バスも運行をし、駅と郊外である八食センター、そして街なかを結んでいます。

その際、拠点経営的に重要なのは、「地元利用(卸や小売)+観光利用」という組み合わせで構成を考えることです。観光客には常に波があります。あくまで基礎収入は地元客で確保しつつ、新幹線駅を活用した観光客収入については、「ボーナス的な位置付け」をすることによって、安定的な経営と「伸びしろ」を確保するのです。

このように、地元として明確な来訪目的を作りつつ、不便になった地域内交通網を「補完する手段を、独自に用意すること」が、新幹線駅拠点だけでなく、周辺地域へ波及を生み出すうえで非常に大切です。

さて、大事なことは3つといいましたが、3つ目は何でしょうか。ストロー効果の話です。先述のように、新幹線開通で地元事務所などが閉鎖され、人も大都市部へ流出するなどのいわゆる典型的なストロー効果も一部では見られます。石川県も実際に、北陸新幹線によるこうした「ストロー効果」を「年27億円のマイナス」と試算しています。

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