共和党「下院奪還」懸念が広がるトランプ・リスク 社会の分断と政治の混迷が深まり弱体化する

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中間選挙の結果、2023年1月からのアメリカ新議会はねじれ状態に(写真左: Yuri Gripas/Bloomberg 写真右:Chris Kleponis/Bloomberg)
歴史的な大接戦となった中間選挙の結果、2023年1月からのアメリカ新議会はいわゆるねじれ状況になり、共和党が奪還した下院は台風の目になりそうだ。これからも社会の分断と敵対的な政治状況という現実は変わりそうもない。さらに深刻になる可能性もあり、メディアでは「内戦」という言葉すらささやかれる。中間選挙に深くかかわってきたトランプ前大統領はいまやアメリカ政治の主役と言うべき存在だ。では、その彼が強い影響力を持つことがなぜ問題なのか。
国際報道記者、研究者としてアメリカ政治を取材、研究してきた成果をまとめた『アメリカの政治任用制度』を出版した関西学院大学の小池洋次フェローが、日本が注視すべき、中間選挙後のアメリカについて解説する。

共和党の下院議長は何が問題か

これまでの中間選挙の歴史をみると、政権党は議会で議席を失うことが多く、下院が野党に奪われるのは予想されたことだった。だが、今回は従来とは違う意味を持っている。それはトランプ前大統領が重要なプレーヤーになったことだ。上下両院、知事の各選挙に彼の推薦する候補が多数、出馬しその多くが当選、下院では、トランプに近いケビン・マッカーシー議員(下院共和党院内総務)が下院議長になることが確実視されている。

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下院議長は、大統領が執務不能になった場合の継承順で、副大統領(上院議長)に次ぐ重要ポストである。下院は過半数の賛成で大統領に対する弾劾を発議できることも忘れてはならない。トランプは民主党支配下の下院で2度弾劾されたが、2度とも、上院で賛成が3分の2に達しなかったので、解任を免れた。共和党支配の下院で逆のことが起きることも予想される。同党は弾劾をチラつかせるだけでも民主党を牽制できることになろう。いわんや、下院共和党はトランプの影響下にあり、彼がリベンジに燃えたとしても不思議ではない。

共和党が下院の多数派になれば、バイデン政権の動きにブレーキがかかるのは間違いない。同政権の政策運営はこれまで以上に難しくなるだろう。そのことが、2024年の大統領選で民主党に不利に働き、共和党の政権奪回の可能性を高めることになる。

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