共和党「下院奪還」懸念が広がるトランプ・リスク 社会の分断と政治の混迷が深まり弱体化する

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高官の解任の仕方についてもそれまでのアメリカの常識からは信じられないことが起きた。例えば、ジェームズ・コミー連邦捜査局(FBI)長官の解任である。10年勤務が常識とされた長官を中途で職を解いたことだけではない。コミーが自らの解任を知ったのは、FBI内の職員を集めた会合でのスピーチの最中で、会場内のテレビ画面を通じてだった。忠誠を誓わない部下には恥をかかせたうえでクビにするというのがトランプ流なのだろう。

トランプに核のボタンを持たせることが妥当なのだろうかという問いもある。ボブ・ウッドワードの著作(邦訳『PERIL危機』)によれば、トランプ政権末期に、マーク・ミリー統合参謀本部議長が国防総省高官との秘密会議で、「核兵器発射について、自分の関与がない限り、誰の命令にも従わないように」指示したという。

トランプないしその影響下にある人物が権力を握ることには懸念を持たざるをえない。

2024年のアメリカ大統領選は混戦に

中間選挙後、アメリカは大統領選挙に向けて本格的に走り出す。では、2024年の大統領選で、両党の候補者になるのは誰なのか。この予測は難しい。

共和党では、トランプが優位に立つとみられるが、前述のように数々の訴訟を抱えており、司法省による起訴もありうる。そうした中で彼が選挙を戦えるかという問題もあろう。もし有罪となり収監されたらどうなるのか。刑事罰を受けた人物が公職に就くことを禁止する法律があるものの、憲法に照らせば、出馬は可能である。共和党内では、デサンティス・フロリダ州知事が有力候補として急浮上しているが、有能でもトランプほどのカリスマ性がないという指摘もある。

民主党はどうか。大統領として史上最高齢のバイデンが2期目を務めることに反対意見が党内でも強い。トランプが出馬すれば、2020年大統領選と同様に「反トランプ」で民主党を結束させるためバイデンを担ぐという声もあるが、疑問視する向きもある。副大統領のカマラ・ハリスはどうかと言えば、彼女を推す声は一向に盛り上がらない。

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