なぜAmazonは幹部でもエコノミーに乗るのか 世界最強企業が大切にする「質素倹約」哲学

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AmazonにはFrugality(質素倹約)を実行した人たちに与えられる「Door Desk Award」という社内表彰制度があります。この賞は、少しコスト削減したくらいではもらえません。常に質素倹約に全力を傾けているアマゾンの中で、さらにたとえば数千万円以上のコストダウンをはからなければ、なかなかもらえない栄誉ある賞です。

Door Deskはamazonにおける、質素倹約の象徴です。創業したときのベゾスはテーブルを買うお金がなかったので、ホーム・デポというホームセンターに行って、ドアに使う安い板と、いわゆる垂木と呼ばれるような木材を買ってきて、それらを金具とネジで留めてつくったテーブルを使っていました。これをDoor Deskと呼んでいて、Door Desk Awardを受賞した人は、トロフィーとしてそのDoor Deskのレプリカがもらえます。

Customers Rule!

この質素倹約の精神は、amazonの社内のいろいろなところに表れています。アマゾンジャパンの社長クラスでも、アメリカ行きの航空チケットはエコノミーであり、ビジネスクラスには基本的に乗りません。新幹線も指定席は取りますが、グリーン車には乗らない。もちろん、「ビジネスクラスで行けば移動中にゆっくり休めるから、向こうに着いてからスタートダッシュで仕事ができる」というのもわかります。でもそれなら1日前に現地に入ればいい。飛行機のエコノミーとビジネスクラスの差額よりも、1泊のホテル代の方が安いからです。

こんなふうに、必要のないコストを使うことを戒める言葉がFrugalityですが、ではなぜamazonはここまで質素倹約にこだわるのでしょうか。決して、自社や経営者のためではありません。

Frugalityは、あくまで「お客さまのために」なされています。ちなみにLPの1つ目は「Cusutomer obsession(顧客へのこだわり)」です。

たとえば一般の会社では、倉庫や流通はコスト部門だと思われています。しかしアマゾンではそういう考え方をしません。倉庫の担当者が頭を使って節約できた原資は、低価格やより良いサービスとなってお客さまに還元される。その原資をつくるのがオペレーションの仕事です。個々の工夫で削減できる金額が微々たるものだとしても、アマゾン全体で見れば大きなものになることは間違いありません。           

なお、Door Desk Awardのトロフィーには、小さい板に「Amazon.com」と彫り込んであって、ベゾスの直筆サインと、「Customers Rule!」という文字が書かれています。Customers Rule!のRuleは名詞ではなく動詞で「支配する」という意味。つまり、「すべてはお客さまが決めているんだよ」という意味です。

佐藤 将之 エバーグローイングパートナーズ代表取締役/事業成長支援アドバイザー

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さとう まさゆき / Masayuki Sato

セガ・エンタープライゼスを経て、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして2000年7月に入社。サプライチェーン、書籍仕入れ部門を経て、2005年よりオペレーション部門にてディレクターとして国内最大級の物流ネットワークの発展に寄与。2016年、同社退社。現在は鮨職人として日本の食文化の発展に携わるとともに、成長企業での15年超の経験を生かし、経営コンサルタントとして企業の成長支援を中心に活動中。著書に『アマゾンのすごいルール』『アマゾンのすごい問題解決』(宝島社)、アマゾンのスピード仕事術」(KADOKAWA)、などがある。

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