釜石線を分ける花巻駅から東北本線を北にゆくと、ほどなく盛岡駅にたどり着く。盛岡駅はいうまでもなく県都のターミナル。1982年から2002年までの20年間にわたって東北新幹線の終着駅として名声を高めた。さらにその間の1997年には秋田新幹線が開業し、その分岐駅にもなっている。岩手県内において、いちばん存在感のある駅は、間違いなくこの盛岡駅といっていい。
盛岡駅が開業したのは1890年のこと。私鉄の日本鉄道によってはるばる東京の上野から延伸してきて到達した。そしてその翌年、盛岡駅の西、いまでいう田沢湖線沿線に小岩井農場が開設されている。
“小岩井”は日本鉄道副社長の小野義眞・三菱総帥の岩崎彌之助・鉄道庁長官の井上勝という3人の頭文字を取ったものだ。火山灰で埋もれた地を開墾して開かれた小岩井農場は日本の畜産業を牽引、戦前には競走馬の生産にも尽力している。そしていまの小岩井農場は、岩手県内指折りの観光地の1つになった。
何かと文学に縁のある
ところで、悲しいかな東北本線の旅は盛岡駅で終わらざるを得ない。2002年に東北新幹線が八戸駅まで延伸したのに合わせて、東北本線の盛岡以北は第三セクターに経営分離。いまではいわて銀河鉄道線として走っている。“銀河”はもちろん宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』にちなんだものだ。
その銀河鉄道線に乗り継いでしばらく行くと、好摩駅という小さな駅がやってくる。石川啄木の生家にもほど近いこの駅からは、花輪線が分かれている。八幡平や十和田湖の観光に……などというと聞こえはいいが、それはほとんど過去のお話。いまは小さなローカル線で、鹿角盆地を経て秋田県北の大館までを結んでいる。
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