激安服「シーイン」日本での普及への「一番の課題」 フォーエバー21の二の舞にはならないのか

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商品の素材は、デニムとTシャツを除けば、ほぼポリエステル、ナイロンなどの合繊。ペラペラの安っぽいものがほとんどだ。縫製のレベルも高いとは言いがたく、中には糸切りの作業をしてないものも散見される。素材、縫製に関しては、ユニクロはもちろん、ジーユーと比較してもレベルが2ランク下がる印象を受けた。

AIを駆使したデザイン自体は悪くない

一方、世界最先端のAIを活用したデザインは、思ったより悪くない。トヨタ自動車の名車「ハチロク」がプリントされたトップスなど、最先端のモード服にも負けない強いデザインも混じっている。アプリの上手な検索方法を見つければ、思いがけない魅力的なデザインの服を手に入れられるかもしれない。

シーイン、SHEIN
「ハチロク」がプリントされた、攻めたデザインのトップスの価格はなんと632円(写真:筆者撮影)

他社のデザインを模倣する意匠権の問題については、AIのチェック機能が働いているのか、某イタリアブランドを連想させるミニバッグを除けば"完コピ"は見られなかった。

特に印象がよかったのは、バッグとニット。2000円前後で買える合皮のバッグ類は、トレンドをしっかり押さえており、見た目的にも洗練されている。アクリル主体のニットも、現代的なデザインやシルエットのものが多く、布帛類と比べるとできがいい。ただし、ファストファッションと相性の悪い紳士服は、予想どおり見るべきものは何もなかった。

店頭の商品は常に入れ替えていく方針が、お店で見られる商品はアプリで実際に買える商品の1%にも満たない。シーインは週あたり10万点の新作を作っているという報道もある。ザラが年間でデザインする品番数は2万5000点というから、ZARAの年間の品番数の4倍を1週間で作っているということになる。もはや冗談としか思えない話である。

前述の通り、日本でZ世代向けの低価格トレンド服の市場は、ジーユーが先行している。しまむらやハニーズなどもこの市場に強いが、この3社と比較してもシーインの価格は圧倒的に安い。

ジャケット類は5000円を超えるものもあるが、メッシュのトップスが632円、ミニバッグが1007円、シルバーのペンダントが71円……と衝撃的な価格が並ぶ。お小遣いの少ないZ世代の中高生にとっては間違いなく魅力的に映るはずだ。ジーユーにとっては脅威でしかないだろう。

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