「日本株買い」は暗号資産市場が混乱しても不変だ 今後の日米の株価は「上昇」「下落」のどちらか

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この暗号資産の混乱は、商品ファンドなどを通して株式市場に短期的な影響を及ぼしそうだ。だが、資金移動などを考えると、中長期では株式市場にとって決して悪いことではない。もし投資家が暗号資産の損失を株の益出しで補い、そのことで株価が下落する局面があれば、株式市場にとっての買い場となろう。

波乱の芽は残るが「日本買い」へ流れが変わってきた

一方、外国人投資家も、割安な日本株をついに買い始めた。直近の対内証券売買契約(財務省ベース)では、外国人は約3400億円の買い越しとなっている。また、東京証券取引所ベースでも、外国人投資家は約3900億円の買い越しと、明らかに流れが変わってきた。

国内の通貨供給の需給で見ても、10月のマネーストック(国内に出回る資金量)平残は1562兆1000億円となっている。これは前月比約1兆2000億円(0.1%)減であり、8月の過去最高1565兆1000億円と比較すると3兆円の減少となっているものの、まだまだ高水準の残高だ。

市場では企業の自己株買いや消却が進んでおり、「株対金(カネ)」のバランスは極めて良好だ。心配されていた企業業績も、今年度の日経平均株価の予想EPS(1株当たり利益)は約2222円と過去最高値となっている。この数値が示すとおり、日本企業は予想以上の戦いをしている。今後の株価は上昇か、下落か。勝負はあったと思う。

ただし、アメリカの各地区の連銀総裁が口をそろえて言っていたように、程度の差こそあるが「FRBの引き締め策はまだまだ続く長期戦」だ。自動売買システムの影響もありボラティリティ(変動率)が極めて高かったNY株は、前出のように次々と関門を突破してきたとはいえ、波乱はこれからも何度もありそうだ。

例えば、今週も15日の中国10月工業生産や小売売上高、アメリカの10月の生産者物価指数、同11月のNY連銀製造業景気指数、さらには16日の同10月小売売上高や鉱工業生産、17日の同10月住宅着工件数・許可件数、同11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数などに波乱の芽がありそうだ。逆に、16日に発表される日本の10月訪日外国人客数の発表は大きな楽しみだ。

10日には国内でトヨタ自動車などの企業が新会社を設立して次世代半導体の国産化に向けた新会社設立の話が駆け巡ったが、こうした前向きな材料も日本を明るく照らしている。

さらに、台湾の半導体受託製造大手であるTSMCの熊本工場への約1兆円投資は直接的経済効果だけでなく、日本の中でも優秀な半導体技術者育成につながる。また、東京エレクトロンなどの製造装置メーカーにも、もちろん恩恵が及ぶ。

すでに岸田文雄首相も「日米による次世代半導体の共同開発などに1.3兆円をつぎ込む」と表明している。稼ぐ力を高めることが日本再生の中心命題だ。前回にも増して「日本の好循環が約30年ぶりに始まった」と筆者は確信している。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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