「アピールポイントは3つに絞れ」の驚くべき根拠 論文マニアがビジネスの常識を本気で検証した

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学校で、授業の内容より余談のほうが記憶に残った経験はありませんか? これにはれっきとしたエビデンスがあることを、最後にお伝えしましょう。

ダエメン大学の心理学者リチャード・カンバロらは、大学生に60語の単語を記憶させる実験を行いました。

絶対に忘れられたくないときに使う裏技

そのとき、半数の学生には「絶対忘れてはいけない」とプレッシャーを与え、もう半数には「忘れてくれていい」と声かけをしました。

さて、どちらの学生のほうがいい成績だったでしょうか?

結果、「忘れていい」と声をかけられた学生のほうが、4%以上成績がよくなりました。

つまり、本当に覚えておいてほしいことは、「忘れてもいいよ」と言ったほうが記憶にとどめてもらえる可能性があるのです。

もう1つ別の研究もご紹介しましょう。

ブラウン大学のエドワーズ博士らは、架空の事件の裁判記録を大学生に読ませ、「あなたが裁判官ならどんな判決を下すか?」と問いかける実験を行いました。

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それは残虐な事件でしたが、約半数の学生には何も言わずそのまま読ませ、残りの学生には「文章の感情的な部分は無視して」と伝えてから読ませました。

するとやはり、こちらも不思議な結果が出ました。

無視するよう言われたグループのほうが、何も言われなかったグループより大幅に厳しい判決を下したのです。

つまり、「感情的な部分は無視して」と言われたことで、むしろ「感情的な部分に引きずられた」わけです。

これらの2つの研究からわかるのは、人は「忘れてくれていい」「無視してください」などの言葉をつけたほうが、記憶に残ったり、その言葉に影響されたりしやすいということです。

実際に、ここまで読んでいただいたあなたは、冒頭の「吉野家の話」が一番印象に残っているのではないでしょうか?

実際の伝える場面で実践するもよし、行動心理学の知識として持っておくもよし。ぜひ、あなただけの「伝え方の法則」を見つけてみてください。

川上 徹也 コピーライター、湘南ストーリーブランディング研究所代表

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かわかみ てつや / Tetsuya Kawakami

大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。50社以上の企業の広告制作や各種プロジェクトに携わる。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。中でも、企業の「哲学」や「理念」を1行に凝縮して旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した第一人者として知られ、現在は広告にとどまらず、「企業」「団体」「地域」などが本来持っている価値を見える化し輝く方法を、個別のアドバイスや講演・執筆を通じて提供している。著書は累計13万部突破の角川新書バカシリース(『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『こだわりバカ』)をはじめ計24冊。海外(台湾・韓国・中国)での出版も翻訳中も含め15冊を数える。

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