福神漬VSたくあん「カレーのお供」巡る意外な歴史 いつから付け合わせに?背景を探る【後編】

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現在のとんかつは、あらかじめ一口大に切られて、箸で食べるようになっています。銀座の煉瓦亭のように、フォークとナイフで食べるオールドスタイルのポークカツレツは少なくなりました。

東京のとんかつ専門店では、福神漬ではなく浅漬やたくあんを添えます。フォークやスプーンならともかく、箸で食べるには細切れの福神漬は食べにくいからです。

ところが、絶対に箸で食べることのない人気の洋食がありました。カレーライスです。

福神漬を製造する各メーカーは、漬物離れの中で生き残るために、洋食のライスの食欲増進剤からカレーライスの付け合わせへと、福神漬の用途を変えていきました。

ご飯のお供からカレーライスの付け合わせに変化

福神漬新旧比較(写真:筆者提供)

この写真は、食欲増進剤であった昔の福神漬(左)と、カレーライスの付け合わせに変身した現在の福神漬(右)を比較したものです。

左は福神漬を発明した酒悦の「元祖福神漬」。戦前から味は変わっていません。

大量のご飯を食べるための食欲増進剤ですので、塩分は約7.2%とたいへん塩辛く、カレーと一緒に食べるには塩っ気が多すぎます。醤油の量が多いために、色は黒くなっています。

右は大手メーカーによる現在のカレー用の福神漬。塩分は3.8%と約半分になり、カレーの味を邪魔することはなくなりました。カレーの付け合わせとして彩りを添えるために、鮮やかに着色されています。

このように福神漬は、大量のご飯を食べるための食欲増進剤から、カレーライスの付け合わせへと変身することで生き残り、日本人の漬物離れによる絶滅の危機から免れたのです。

※この記事の前編:カレーに「福神漬」を入れる人が知らない"真実"

近代食文化研究会 食文化史研究家

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きんだいしょくぶんかけんきゅうかい / Kindai Shokubunka Kenkyukai

食文化史研究家。2018年に『お好み焼きの戦前史』を出版。以降、一年に一冊のペースで『牛丼の戦前史』『焼鳥の戦前史』『串かつの戦前史』『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』等を出版。膨大な収集資料を用いて近代の食文化史を解き明かしている。(Amazon著者ページTwitterアカウントnote

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