今では希少なFRスポーツ「GR86」発売1年通信簿 兄弟車のBRZとスポーツカーの存在意義を示す

拡大
縮小
エンジン
エンジンは、先代の2Lから2.4Lに排気量をアップし、最大出力は235ps、最大トルクは25.5kgf・mに向上。とくに排気量アップにより、低回転から余裕のあるトルクを発生する(写真:トヨタ自動車)

新型のGR86/BRZは、性能が大きく進歩した。たとえばエンジン排気量も拡大し、より速く走れるスポーツカーになった。発売前には、新旧車両を比較できるサーキット走行の機会が設けられ、新型がより高い速度でコースを走れることを体感した。

造形はより洗練されたが、外観は一目でそれとわかる、86らしさ、BRZらしさを保持した姿であったので、公道で新型を見かける機会は限られたように感じた。ところが、最近になって新型によく気づかされる。

スポーツカーながら堅実な販売を見せるGR86/BRZ

スタイリング
GR86のスタイリング(写真:トヨタ自動車)

日本自動車販売協会連合会の統計によれば、発売された昨年の10月にBRZは1266台で28位という販売実績をあげている。翌11月には、GR86が887台、BRZが638台で、両車をあわせ1500台を超えている。12月にはGR86が1147台を売った。この販売台数がどれくらいの実力かというと、たとえば昨年12月のGR86の1つ上の順位にクラウンがいる。新型クラウンが、新たにクロスオーバーとしてモデルチェンジを迎えたように、4ドアセダンの前型クラウンの販売が苦戦気味であったとはいえ、それと同じくらいにスポーツカーが売れていたということになる。

年が明け、今年になってからもGR86は自販連の乗用車ブランド通称名別順位で50位以内に車名を記しており、多少上下しながら1000~1500台を販売し、直近の9月は974台であった。BRZは、その後50位以内に車名を出せずにいるが、累計販売台数は6707台であるという(スバル広報)。両車の販売台数の積み上げがいよいよ効果を生んで、公道で見かける機会が増えたのではないか。

ロードスター
GR86/BRZと同様、現行モデルで買える数少ないスポーツカーのマツダ・ロードスター(写真:マツダ)

スポーツカーが販売台数を維持するのは容易ではない。自販連の乗用車ブランド通称名別順位で50位以内に入ることのあるFRのスポーツカーとなると、トヨタの86を除けばマツダ「ロードスター」くらいだ。その販売台数は、月販で1000台を下まわることも多い。スポーツカーは儲からないといわれる理由はそこにある。乗用車ブランド通称名別順位の50位の販売台数は3桁になることが多く、一方で、新車販売の採算が合うのは数千台規模といわれるので、スポーツカーに限らずだが月販台数が3桁の車種は苦しい状況にある。

【2022年11月21日9時1分追記】ロードスターの順位にかかわる初出時の記載を修正しました。

そうした経営面での課題を乗り越えてもスポーツカーを存続させるには、乗用車で使われている部品をいかに有効活用し、運転の醍醐味を味わわせるスポーツカーを成り立たせるか、そこが開発のカギを握る。

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