小山バス事故「6年前の軽井沢事故」との共通点 不慣れな運転士による事故が後を絶たない理由

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しかも、大型バスのディーゼルエンジンは、最高許容回転数が2000~2500rpmあたりで、小型バスや乗用車のディーゼルエンジンより使える回転域が狭いうえに、トランスミッションは“フィンガーシフト”と呼ばれるメカニズムが一般的になっている。

それぞれの説明は以前の記事を見ていただくとして、フィンガーシフトはシフトダウン時に回転が上がりすぎる場合、エンジントラブルを防ぐために変速を“受け付けない仕組み”になっているのだ。また排気ブレーキは、フットブレーキと操作方法が異なるので、運転操作によってはうまく効かせられない可能性がある。

大型バスのフィンガーシフトのレバーは電気式のスイッチになっている(写真:EFA36 / PIXTA)

事故を起こしたバスは、どちらもギアがニュートラル状態になっていたという。ギアチェンジができず、排気ブレーキも効かせられずに速度超過を招いてしまったことは、一致しているように思える。

軽井沢の事故で死亡した運転士は65歳、今回の事故の運転士は最初に書いたように26歳と、年齢には大差があるものの、大型バスの経験が豊富ではなかったことも共通している。

実際、軽井沢の事故の運転士は、バス会社に対して「大型バスは不慣れであり苦手だ」と訴えていたという。今回の事故の運転士は、別の会社でトラックやバスの運転はしていたものの、観光バスの運転は今年の春に現在の会社に入ってからだという。運転に慣れていなかった可能性がある。

なぜ、不慣れな運転士が充てられたのか

筆者は、軽井沢の事故の現場も今回の現場の事故も、乗用車で走ったことがある。とりわけ今回の事故現場周辺は、急カーブが続くうえにアップダウンも激しく、乗用車であっても走るのに気をつかう。そこを運転経験の浅い人が運転する観光バスに乗るというのは、あまり想像したくない状況である。

では、なぜ経験の浅い運転士がハンドルを握ることになったか。今回に限れば、日本政府が新型コロナウイルス感染症との共存、つまり“ウィズコロナ”の方針を出し、全国旅行支援などを実施しはじめたことがあるだろう。

コロナ禍では、バス業界も苦境に陥った。2021年の貸切バス事業の倒産は14件で、1992年以降で最多を記録している。つまり、会社も運転士も減ったのだ。ここへきて観光需要は復活しつつあるものの、一度業界を去った運転士の多くは他の職に就いているはずで、すぐに戻るのは難しい。そんな中で経験の浅い人を雇ったところもあるだろう。

旅行会社とバス会社の関係も気になる。旅行会社が利用者からの予約を受け、バス会社に車両を手配するというプロセスが、2つの事故で似ているからだ。

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