旅行会社が明かす「夜行列車ツアー」高いハードル 鉄道会社に理解者がいないと企画が進まない

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コロナ禍の時期も罹患対策をとり、密になる基本プランはなしにして、間隔を空けて座れる2席プラン、4席プランのみを販売。そのため、コロナ禍にもかかわらず、多くの申し込みがあったという。

「12系のツアーを皮切りに、その頃からいろんな夜行商品を作っていきたいと考えるようになりました。2019年8月に行った津軽鉄道の旧型客車夜行はたちねぷたの時期に合わせ行ったので、たちねぷた体験をしつつ夜行にも参加してもらえました。この時期はたいていホテルがいっぱいになりますが、夜行列車はそのホテル代わりにもなり、大変好評でした」

最初に声をかけたのは大井川鉄道だったが、実現まで時間がかかり、2022年4月にようやくツアーが行われた。

「津軽鉄道もそうですが、大井川鉄道は12系客車よりさらにノスタルジックな世界。昭和20年代以降から30年代後半くらいまで日本の経済成長を担った旧型車両を数多く保有している。当時はあの車両がスタンダードでした。私たち世代には書物などでしか見たことなかった世界を現代によみがえらせる、という奇跡に近い企画なのです」

夜行列車ツアーの企画で重要なことは?

――今回の西武鉄道・秩父鉄道の夜行企画は、ちょっと毛色が違いましたね。参加者は若い人も多かったように感じます。

「今までは客車に固執してやっていましたが、今回のコンセプトは『首都圏から出発する』こと。夜行列車は東京、上野、新宿、大阪など、大都市からどこかへ行く、というのがいちばん多いパターンでした。きらびやかな街からだんだん田舎へと風景が移動していく。その様が泊まりながら楽しめるのが本来の夜行列車。それをやるためには4000系しかなかった。若い人も多かったのは、首都圏からで参加しやすい、ということもあったのではないでしょうか。写真を撮るために追いかけている人たちも、若者が多かった気がします。今回の企画は夜行列車ファンの幅を広げたかもしれません」

――夜行列車の企画を考えるうえで、大切なことは何ですか?

「夜行列車企画を強力に推進するエネルギーを持っている人が鉄道会社にいることが重要です。理解者がいないと進みません。鉄道会社によっては、夜ではない昼間の企画でもOKを出してくれないところもあります。そういう会社は毎日のルーティーンを守ることが安全面を確保するいちばんのことだと思われているようで、なかなか企画は通りません」

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