旅行会社が明かす「夜行列車ツアー」高いハードル 鉄道会社に理解者がいないと企画が進まない

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22時過ぎ、ピーッと汽笛が鳴り、列車が出発。あらかじめ持参してきたお酒と食べ物をさっそく広げた。過ぎゆく景色を眺めながら飲み食いするのも、夜行列車の醍醐味だ。

車内を見回すと、他にも日本酒などを持ち込んで酒盛りしている人たちがいた。足元に新聞紙を敷き、靴を脱いでくつろいでいる。かつての夜行列車ではそうして過ごす人も多かったという。

0時を回ると「車内を減光いたします」とアナウンスが入った。放送のたびに流れるのはハイケンスのセレナーデ。懐かしいこのメロディーは、「はまなす」をはじめ、数々のブルートレインで聞いたなあ、と郷愁が押し寄せる。

夜中に到着した三峰口駅では、列車の撮影会が行われ、希望者には夜鳴きそばが提供された。そして朝5時半過ぎに、列車は終点でもある熊谷駅に到着した。

今年9月半ばには、「臨時夜行急行『奥武蔵51号』西武鉄道線周遊・秩父鉄道線周遊 西武秩父行の旅」という夜行列車ツアーが開催。さっそく参加してみた。

首都圏発の夜行列車

このツアーで使われた車両は西武鉄道4000系。客車ではないが、クロスシートが並ぶ。座席の料金設定は秩父夜行とだいたい同じだ。

列車は夜9時過ぎに池袋駅を出発する首都圏からの夜行列車。こちらは小回りのきく電車ならではの行程で、4000系がまず入ることがない豊島園駅や西武球場前駅などに入線し、撮影会などが行われた。

途中、正丸トンネルでは一部区間消灯し運転停車という貴重な体験もあり、そのまま秩父鉄道に乗り入れてからは、景色がガラリと変わった。

そして夜中はやはり長瀞駅で駅そばを食べた。朝6時頃に到着した終点の西武秩父駅では、西武秩父駅前温泉「祭の湯」で朝風呂を、そして朝食がいただけるという、盛りだくさんの10時間だった。

ほかにも、大井川鉄道の旧型電気機関車&旧型客車で行く旧客夜行 臨時急行「南アルプス51号」、津軽鉄道での旧型客車夜行「津軽」の旅、伊豆急リゾート21で行く「伊豆急夜行」など、数々の夜行企画が実施されている。

これら夜行列車ツアーを企画した、日本旅行大阪法人営業統括部 鉄道・バス企画デスク課長の山中章雄さんに、話を聞いてみた。

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