旅行会社が明かす「夜行列車ツアー」高いハードル 鉄道会社に理解者がいないと企画が進まない

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――夜行列車ツアーはいつから始まったのですか?

「最初のツアーは、2018年12月の秩父鉄道の12系客車を使った夜行急行でした。夜行企画自体は7〜8年前から考えていましたが、あまり実例がなかった。実際やってみて採算が取れるのかなど疑問点もあり、いろいろ検討していました。その後、いざ動き出して告知を出すと、その反響は大きく、販売をスタートしてみたら、4両編成の約120人分が10分で完売しました」

――なぜ夜行列車を走らせようと思ったのですか?

「夜行列車はほぼなくなってしまいましたが、いまだに郷愁を感じられる夜行列車の復活を求める声はあります。移動の手段としてではなく、乗ることに価値を求める人が増えてきた。しかし鉄道会社がレギュラーで走らせるには、コストがかかるので難しい。そこで旅行会社が1編成を買い取って費用を出すことで、鉄道会社は赤字を出すことなく列車を動かすことが可能になる。そこに需要があると思いました」

「客車で夜行列車ツアーをやりたい」

JR旅客6社が合同で行う旅行企画「デスティネーションキャンペーン」の時期にJRに絡めたツアーを作る旅行会社は多いが、私鉄を使ったものは少ないという。ましてや夜行列車となると、ほぼ聞いたことがない。

「いろいろ鉄道会社を調べていくうち、やはり客車でやりたい、という強い思いがわいてきました。客車を機関車が引っ張れる私鉄となると、鉄道会社が限られる。津軽鉄道、真岡鉄道、秩父鉄道、大井川鉄道、候補はこの4つでした。打診していくうちに、秩父鉄道が実現できそう、ということになり、話が進みました」

山中さんは現在52歳。まさに学生時代にリアルタイムで客車に乗っていた世代でもあり、思い入れがある。夜行企画のターゲット層も、最初は40〜60代だったという。

さらに、席のプランがいろいろあるのもよかった。安いプランを求める方には1席プラン、2席を専有できるプラン、余裕のある4席プラン(1ボックス)、と3パターンの買い方ができた。通常、鉄道会社の販売では、1人で何席も買うことができない。3種類の座席販売は旅行商品ならではのプラン。これがヒットした。

「実際に参加したお客様にも好評で、シリーズとしてやっていこうと。今は秩父夜行は年に1~2回のペースでやっています。秩父夜行は今回の西武鉄道とのものも含めると、すでに7回ツアーを行っています」

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