「カニエ・ウェスト問題」アディダスが被る損害 人種差別言動繰り返すウェストと契約解除
ドイツではネット上での反ユダヤ主義的な発言は訴追の対象となるため、ナチス時代と関係のある企業には、そうした感情が戻らないような行動が求められているのだ。
ここ数日、アメリカでアディダスに対する圧力が強まり、同社の経営層がほぼ沈黙を守る中、これに自社の幹部でさえも不満を募らせていた。「アディダスの世界インクルージョン週間を終えたけれど、私は(ここで)インクルードされている(受け入れられている)と感じていない」と、アメリカのアディダスのトレードマーケティング担当ディレクター、サラ・カムヒは24日、リンクトインに投稿した。
彼女は、アディダスが薬物検査に引っかかった選手や「一緒に仕事をするのが難しい」選手との関係を絶った一方で、「われわれのトップブランドパートナーの1人によるヘイトスピーチ、危険なステレオタイプの蔓延、露骨な人種差別を糾弾する気がない」と書いている。
「ユダヤ人社会の一員として、私を雇用しているブランドのために、もはや黙っていることはできない」とカムヒ。「何も言わないということは、すべてを言っているということだ」。
株価は1カ月で20%以上も下落
アディダスの株価は、24日に2.4%下落。イェの度重なる言動により、同社の株価は過去1カ月で20%以上値を下げた。
アディダスは、イェがナイキを去った後にコラボレーションを始め、このラッパーからの公的な非難に長い間耐えてきた。スニーカーと衣類を網羅するイェの会社、Yeezyとのパートナーシップの価値はこれまで公表されてこなかったが、調査会社モーニングスターのデビッド・スワーツは最近のレポートで、その価値を約15億〜20億ユーロ(約2200億〜約2950億円)と推定している。
イェへのロイヤリティの支払いも非公開だが、スワーツは「年間1億ユーロを超える可能性がある」と見る。
アディダスにとって、イェとのコラボレーションはクリエイティブなカッコよさと信頼性を高め、グッチやバレンシアガといったハイファッションのコラボレーターを引きつけるのに役立った。同社は、この動きが今年の利益に「短期的には最大2億5000万ユーロのマイナス影響」を与えると予想しているという。