原発被災地の「鉄道代替輸送」に足りないもの 帰還困難区域内の列車代行バスに乗ってみた
私が乗った便を利用すれば、6時50分に原ノ町を出ると、9時07分にいわきに着くことができる。いわき市内に所用があるのなら、適当な到着時刻だろう。いわきで特急に乗り継ぐと、上野には11時35分着だ。
帰路は19時25分いわき発竜田行きの電車に乗れば、竜田でバスに乗り継げ、21時20分に原ノ町に帰り着ける。一応、通勤も不可能ではない。ただ、震災前の普通列車と比べると、30~40分程度、いわき~原ノ町間の所要時間は延びている。
限られるバス需要、今後は列車の復旧工事粛々と
このように限られた需要しか見込めず、実際、運転開始初日の試乗客を除いた利用者数はごく少ないように見受けられた。地元では増発を求める声もあるようだが、現在のところ具体的な動きはない。
一方、太田昭宏国交省は3月3日の記者会見で、常磐線竜田~原ノ町間の今後の見通しについて、「運転が可能となったところから、順次、運転を再開する」と述べている。安倍晋三首相の指示によるもので、具体的な復旧区間や時期はまだ検討中とのことだが、なるべく早く運転を再開するよう、JR東日本などと調整を進めるというのが政府の意向だ。
実際、列車が運行されている竜田駅も避難指示解除準備区域に含まれており、夜間の滞在(宿泊)は自宅であっても原則禁止であることには違いない。同様に避難指示解除準備区域に含まれている竜田~富岡間や、浪江~桃内~原ノ町間などは、早期の運転再開が望まれるところであろう。
バスが通行できるのなら、途中駅を通過することによって、列車の運行も再開できるかもしれない。しかし実際は、原発事故のみならず、地震や津波による被害を受けた場所も多く、復旧はそう容易ではない。
当面は、バスによりやや広域的な需要に応じつつ、その間に常磐線の復旧工事を順次進めるということになろう。住民の帰還が進めば、鉄道の運転再開を待たずに途中駅に立ち寄る代行バスを改めて設定し、ノンストップの「快速便」と併用することも考えられる。
3月1日には、常磐道の常陸富岡IC~浪江IC間が開通し、全線開通となった。仮に代行バスを常磐道経由とできれば、スピードアップにもつながる。いわき~原ノ町間の直通運行も考えられるようにもなる。
震災前の特急「スーパーひたち」は、上野をターミナルとしており、水戸、いわき、原ノ町を経由して、最も長い距離を走る列車では仙台まで運転されていた。東京まで乗り換えなしで行けるから、当然、相馬市、南相馬市あたりの人も、上野直通の特急を多く利用する機会があったに違いない。
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