自分の強みを知れば、一段と上達できる 私が「米国ツアー」でブレークできた理由

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3月に入り、今年の女子プロゴルフツアーが開幕しました。ここ数年若手の台頭が目覚ましく、次から次に実力ある新人が登場しています。

また、アマチュア選手の活躍も光り、プロテストでプロ入りしてくる選手が増えてきて、ステップアップツアーで優勝する新人選手も目立ってきました。ただ、レギュラーツアーですぐ活躍するには、なかなか壁は高いようです。ベテランから新人まで、試合が始まったら横一線。自分の強みを最大限に生かして、最後まで粘り強くプレーすることが大事になってきます。

さて、自分の強みって何でしょう。私は深く考えさせられた時期がありました。ゴルフは私にとって仕事。自分の強みを把握しないと死活問題です。スイングでの強みは何か? 攻め方の強みは何か? 体力では? 精神力では?

なぜそんなに真剣に考えたかというと、米国ツアーに参戦したとき、まったく成績が振るわず、自分のゴルフに自信を失ったからです。日本で成功したゴルフが通用せず、自分のゴルフっていったい何なのだろうと頭を抱えました。

日本では飛ばし屋といわれ、パー5で2オンを狙う豪快なゴルフが売りでした。思い切りがいい分、グリーンを大幅にオーバーしたり、林に曲げたりもしましたが、そこからどうやってリカバリーするのか考えるのが、楽しくもありました。パッティングは距離を忘れて入れることしか考えず、カップの向こう側にガツンと当てて強く入れることもしばしば。とにかく、怖いもの知らずで、イケイケのゴルフだったのです。

ところがそれは、自分のゴルフがそういうものだと迷うことが少なかったからできていたのです。米国ツアーに行ったら、それどころではなくなりました。強気のパッティングは、速いグリーンに対して3パットかバーディーかの極端な傾向になり、日本の飛ばし屋も米国に行けばやや飛ぶ程度。よいスコアで回る人は日本以上にいて、成績もすっかり落ち込み、自信がなくなりました。

そして悩んだ末に出した結論は、ショットの精度を磨くということでした。努力してもなかなか伸びない飛距離に見切りをつけ、よりピンの近くに寄せる精度の高いスイング作りに励みました。そして、もともと得意だったサンドウエッジに磨きをかけ、グリーン周りから拾える確率を高めました。それに伴い攻め方も変え、体力も強化しました。

飛ばし屋から決別し、安定度の高いゴルフに変え、これが私の米国でのゴルフの生きる道、と定めたのです。迷いそうな心にむち打って努力した結果、何度か優勝もし、実を結びました。大事なのは自分の現状を知ること。そして自分の強みは何かを把握すれば、誰と戦っても迷うことなく自分のゴルフに徹することができます。

今年はどの選手がどんな強さを発揮するのか大いに楽しみです。

週刊東洋経済 3月14日号

小林 浩美 プロゴルファー

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こばやし ひろみ

1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。

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