まるで手品!?ロボットが知人に見える錯覚 <動画>「対孤独」通信デバイス、OriHimeとは

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 OriHimeとは通信機能を備えた人型のロボット。パソコンやiPhoneとつなぎ、遠隔地と対話をするためのデバイスだ。「みんなと一緒にいられない」という孤独、また「ここにいるべき人がいない」という喪失感をやわらげるのに役立つ。

開発者であるオリィ研究所の吉藤健太朗氏が「能面のような表情」と自ら語るように、一見、不気味な印象も受ける。しかしこの小さな、無表情のロボットが持つ効果は想像以上にパワフルだ。

「小学校2年生の男の子が入院したケースでは、OriHimeを家族側に、ノートパソコンを病室に設置しました。餅つきをやるときにはお父さんが庭にOriHimeを持ち出したので、男の子もその光景も楽しめて、家族側も寂しさを軽減できたようです」

「存在感を出す」という発想

吉藤健太朗(よしふじ・けんたろう) 幼い頃学校に通えなくなるという経験を通じて、患者を孤独から救う研究を開始。高専にて人工知能を学び、早稲田大学創造理工学部へ。2012年に株式会社オリィ研究所を設立し、代表に就任

仮に、前述の男の子がテレビ電話(スカイプでももちろん同様)で家にいる家族と話すとしよう。家族は男の子がどんな服を着ているか、どんな表情をしているかわかる。視覚でやり取りする情報は電話以上だ。

そこで、家族側のモニターをOriHimeに置き換えるとどうなるのか。実際、家族にはどんなことが起こったのか。

音声は聞こえてもモニターはないので、家族は病室の男の子がどんな服を着ているかも、どんな表情をしているかもわからない。

しかし、声を発しているのが人型のロボットで、さらに話に合わせて手を挙げたり、拍手をしたりというジェスチャーをすることで、突然ロボットに存在感が出てくる。モニターの向こうに話しかけるのではなくOriHimeに話しかけることで、今そこに男の子がいる気がしてくるのだ。

実はOriHimeに存在感を持たせるために、顔を能面のような表情にしたのだという。そこにはかつて深い孤独にさいなまれた、吉藤氏の計算があった。

スタートアップチャンネル企画チーム

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