「世界遺産」目指す佐渡への交通、どう維持する? 船はみちのりHD傘下に、「トキエア」も就航予定
JR西日本に続き、JR東日本も赤字ローカル線の収支を公表するなど、地方路線の維持問題が注目を集めているが、鉄道以上に深刻なのが離島航路だ。鉄道であれば、BRT(バス高速輸送システム)や路線バスへの置き換えの議論の余地があるが、海路は代替手段がほぼなく、いかに赤字であろうと島に人が住む以上、永続的に維持していかなければならない。
我が国を代表する離島である佐渡島と本土(新潟)を結ぶ佐渡航路は、1932年以来、佐渡汽船が一手に担ってきた。しかし、同社はコロナ禍で大幅な債務超過に陥り、2022年3月、第三者割当増資により新たに筆頭株主(従前は、新潟県が筆頭株主)となったみちのりホールディングス(以下、みちのりHD)の傘下に入った。今後は同HD主導で経営再建が進められる。
佐渡汽船の新社長に就任した尾渡英生氏(前職はみちのりHD傘下の湘南モノレール社長)に今後の経営再建策などを聞くとともに、2023年度以降に佐渡空港への就航を表明しているトキエア(新潟市)にも事業構想などについて聞いた。
佐渡の労働人口を増やしたい
■佐渡汽船社長 尾渡英生氏インタビュー
みちのりHDは東北・北関東を中心に経営難に陥った地方交通の再生を手がけ、現在は傘下の交通事業者として岩手県北バス、福島交通、会津バス、関東自動車、茨城交通、湘南モノレール、佐渡汽船が名を連ねる。佐渡汽船は現在、新潟航路(新潟―両津間)と直江津航路(直江津―小木間)の2航路を運航し、新潟航路にはカーフェリーとジェットフォイル(高速水中翼船)、直江津航路にはジェットフォイルが就航している。
――佐渡島の人口はピーク時には12万人を超えていたが、2020年には約5万1000人まで減少している。島民の利用増が見込みづらい中、経営再建のカギとなるのは、やはり観光客の呼び込みか。
佐渡金山の世界遺産登録による効果を期待しているのはもちろんだが、佐渡の労働人口を増やすことも考えなければならない。佐渡の魅力を高め、IT関連などリモートで仕事ができる人たちなどに移住先として選んでもらうことが必要だ。また、お米や「おけさ柿」などの果物や海産物など佐渡の産品が今以上に売れるようにすることも重要だ。物が売れ、地元事業者の事業規模が拡大すれば、島外から従業員を雇うようになるし、当社は旅客のみならず貨物輸送も担っているので、運ぶ物量が増えることにもなる。
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