「世界遺産」目指す佐渡への交通、どう維持する? 船はみちのりHD傘下に、「トキエア」も就航予定

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――佐渡は、冬の天候が荒れやすいが、安定的な運航は可能か。また、夏と冬とで観光の繁閑の差が大きいことは問題にならないか。

今後、テスト飛行を重ねる必要があるが、高高度を飛行するジェット機と異なり、プロペラ機が飛ぶ高度は気流の影響を受けにくいと聞いており、冬でも極端に就航率は下がらないと思う。

繁閑の差については、旅客と貨物の量を調整することで解決しようと考えている。われわれが使用する機材は、座席を取り外し、小型のコンテナに置き換えられる「カーゴ・フレックス」仕様になっている。一晩で全席を座席からコンテナに置き換えるオペレーションも可能だ。

貨物輸送の可能性も広がる。生鮮品などを運ぶ場合、船・トラックで運ぶのと、飛行機で消費地に直接運ぶのとでは、スピード感がまったく異なる。これまでは、地産地消しかされていなかった佐渡の特産品を外に出すことで、地元経済の活性化につなげていきたい。

佐渡空港ターミナル
佐渡空港ターミナル。定期便の就航には改修・整備が必要だ(筆者撮影)

佐渡の交通、今後どうなる?

さて、2社からの話を聞いたうえでポイントを整理すると、佐渡汽船で今後、重要性を増しそうなのが貨物事業だ。同社の貨物事業は、現状は赤字だが、収支改善することに尾渡氏は意欲を見せる。商社で物流に携わった経験が長い尾渡氏の力量が問われる部分であり、スピードを武器に貨物事業にも参入するトキエアにいかに対抗するか、場合によってはいかに連携するかの戦略が必要になりそうだ。

一方、トキエアは単に空路を開設するのみならず、地域活性化と結びつける事業内容に面白みがあるが、事業計画・スケジュールに不確定な部分が多い。また、航空事業を維持するには、言うまでもなく莫大な資金が必要であり、現状、地元財界関係者や、県からの融資等により資金調達を進めているが、経営体力の面に課題があることは否めない。空路の開設を起爆剤に、空港を中心に地域を活性化し、そこで行う周辺ビジネス等でいかに稼げる体質をつくれるかが、事業安定化・永続化のカギとなりそうだ。

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森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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