「世界遺産」目指す佐渡への交通、どう維持する? 船はみちのりHD傘下に、「トキエア」も就航予定

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――船の運賃について。4月以降、島民割などの各種割引の見直しが行われ、運賃がやや割高になった。とくに生活の足として船を使っている島民にとっては、使いづらい運賃になったのではないか。

経営改善のためのやむを得ない措置だ。われわれは、大変な経営状況に陥っている佐渡汽船という会社をお引き受けし、2つの航路と社員の雇用を維持することが至上命題となった。燃料費や物価が高騰する現段階においては、料金を引き下げるのは非常に難しい選択肢だ。

――トキエアが佐渡空港への乗り入れを表明しており、競争が生じる可能性がある。どのような対策を取るか。

(トキエアのことではないと前置きしつつ)今後、たとえばほかの海運会社等が、本土―佐渡航路に就航するような話が出てくるならば、難しい話になる。

われわれは地方の一交通事業者として、縮小が続く限られた需要の中で、なんとかサービスや雇用を維持しようと努力している。そこに価格競争が生じ、需要を奪い合うようなことになれば事業として成り立たず、共倒れになるかもしれない。

まず4路線の就航目指すトキエア

トキアビエーションキャピタル 空港・地域活性化戦略室室長 小川圭太氏インタビュー

トキエア
日本航空(JAL)勤務後、ジェットスター・ジャパンの立ち上げ、三菱リージョナルジェット開発プロジェクト等に携わった長谷川政樹氏が新潟を拠点に設立した新しい航空会社。現在、2023年3月以降の新潟―札幌など4路線の定期便就航を目指し、航空運送事業許可申請の準備を進めているほか、その後の東京―佐渡直行便の就航も表明している。関連会社のトキアビエーションキャピタルは、航空に基軸を置いた地域活性化事業等を担う。

――トキエアの事業構想を教えてほしい。

まずは、新潟と丘珠空港(札幌)、仙台空港、中京圏(中部国際空港で協議中)、関西圏(神戸空港で協議中)を結ぶ4路線の就航を目指しており、各路線とも1日2往復飛ばすことをベースに考えている。

機材(機体)は、就航当初はエアバスグループのATR社の約70人が乗れるプロペラ機(ATR72-600)2機を使用する。国内の大半を給油なしで航続が可能と燃費効率がいいことや、空港使用料が安く抑えられることが同機を採用した主な理由だ。

トキエアの航空機
「TOKI」のロゴが入った、トキエアとリース契約を締結した機材=9月中旬、仏・ツールーズのATR社内で撮影(写真:トキエア)

上記4路線を就航させた後、次のステージとして東京と佐渡空港を結ぶ直行便の就航を目指す。佐渡空港は滑走路が890mと短いため、他路線よりも小型の機材(ATR42-600、標準座席数48)を当面は使用するが、2025年度にSTOL機(短距離離着陸機)のATR42-600Sが市場投入された後は、同機に切り替えることになる。(筆者注:ATR42-600を800m級の滑走路で使用する場合、乗客数を定員の半数程度に減らす必要がある)

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