「世界遺産」目指す佐渡への交通、どう維持する? 船はみちのりHD傘下に、「トキエア」も就航予定

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――観光面に着目すると、新潟航路の玄関口である両津港周辺の街に活気が乏しく、廃業した宿泊施設が散見され、営業している施設の老朽化も目立つ。一方で、夏の繁忙期やイベント開催時には宿が足りなくなる。こうした部分に関して打てる手はあるか。

事業再生に着手したばかりの当社に今すぐにできることは限られるが、着目しているのは古民家の再生だ。現在、島内には5000戸の空き家があり、今後も年々増えていく。これらをリノベーションして長期滞在者用の宿泊施設として使うことを、少しずつでも進めていければと考えている。

尾渡英生氏
佐渡汽船社長の尾渡英生氏(筆者撮影)

宿泊施設と並んで、不足しがちなのが島内のレンタカーだ。佐渡島は855㎡(東京23区の1.4倍)の広さがあり、観光にはレンタカー、マイカーの利用が便利だ。当社グループの佐渡汽船観光が62台、島全体で300台くらいのレンタカーがあるものの、繁忙期にはすぐに予約が埋まる。今後はレンタカーの台数を増やすとともに、カーフェリーにマイカーを積んで佐渡にお越しいただくよう、プロモーションしていく考えだ。

――直江津航路は、現在はジェットフォイル1隻体制だが、近いうちに、愛媛の海運会社からカーフェリーを購入し、ジェットフォイルと置き換える計画とのこと。これはマイカー利用の促進とも関係があるか。

もちろん、ある。直江津港は北陸自動車道の上越ICに近く、上信越自動車道との接続もいい。カーフェリー導入は観光のみならず、地元の方々の移動や物流の利便性向上の観点からも、非常に大きな意味がある。

直江津航路にカーフェリー投入の狙い

――直江津航路では2020年まで高速カーフェリー「あかね」が運航されていたが、不採算路線であるうえに、フェリーは維持費がかかることから、ジェットフォイルに置き換えた経緯がある。再度、カーフェリーに戻すのは、リスクが大きいのではないか。

直江津航路も、かつてはカーフェリー2隻プラス、ジェットフォイル1隻の計3隻体制で運航していた時期もあった。その後、紆余曲折を経て、カーフェリー1隻体制となり、2015年の北陸新幹線の金沢延伸開業に合わせて「あかね」が就航した。しかし、この「あかね」が非常に揺れる船で乗り心地が悪く、客離れを起こしたという経緯がある。したがって、便利さと乗り心地のよさをきちんとPRできれば、利用者は戻ると考えている。

また、物流も重要だ。現在、佐渡への生活物資等の輸送は当社の新潟航路が一手に担っており、直江津方面から佐渡への輸送は新潟経由になる。直江津から新潟は地図で見ると近く感じるが、実際に高速道路を走ると2時間近くかかり、時間的ロスからのコスト増はかなりのものがある。

新潟港
新潟港の佐渡汽船ジェットフォイル乗船場(筆者撮影)

こうした観点から、直江津航路へのカーフェリー導入は、地元の皆様からの要望の声が非常に大きい。ただし、ご指摘のとおりリスクは常にあるので、当社として営業努力をするのはもちろん、県および関係各市から、どのようなご支援をいただけるのかということも重要だ。また、佐渡島は国の政策である「有人国境離島」に指定されており、国としても地域社会の維持に支援を行っている。今回の件に関して、国のご理解もいただけるはずだ。

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