鉄道写真家が振り返る「開業150年」の長い道のり 100周年行事の会場は今はなき「汐留駅」だった

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鉄道150年の歴史の中では、太平洋戦争の戦火の中の鉄道も忘れることはできない。各地でアメリカ軍の空襲や艦砲射撃で鉄道が破壊され、走行中の列車も攻撃の対象となった。1945年8月5日、中央線湯の花トンネルでアメリカ軍の艦載機が満員状態の列車に対して執拗な機銃掃射を加え、60人以上の犠牲者を出した。現在の裏高尾といわれる線路脇に慰霊碑が建立されている。広島、長崎では人類初の原子爆弾によって鉄道はおろか町が破壊され甚大な被害が発生した。

長い歴史の間には数々の鉄道事故も発生した。桜木町駅での列車火災(1951年)、三河島事故(1962年)、北陸トンネル火災事故(1972年)、民営化以後で乗客が犠牲になった最初の事故である中央本線東中野駅での列車追突事故(1988年)、第三セクター信楽高原鐵道で発生した列車衝突事故(1991年)、そして2005年4月、JR西日本福知山線塚口―尼崎間で発生した列車脱線事故(107人死亡、562人負傷)の衝撃は今も記憶に新しい。

自然災害を克服できるか

近年では、自然災害による鉄道の寸断も重大な問題だ。

1923年9月1日に発生した関東大地震では、鉄道も各地で壊滅的な被害が発生した。近年では阪神・淡路大震災、東日本大震災で大きな被害を受け、とくに東日本大震災に伴う福島第1原発事故がもたらした放射能汚染によって、常磐線は長年の運休を余儀なくされた。

第二球磨川橋梁
JR九州肥薩線の第二球磨川橋梁。2020年の豪雨で被災し不通が続いている(撮影:南正時)

災害は地震だけではない。JR北海道・日高本線の豪雨による被害は路線廃止につながり、JR九州の肥薩線も豪雨被害によって不通が続いている。

自然災害は世界の鉄道にとっても最大の関心事項だが、新幹線を生んだ日本の鉄道技術は鉄道200年に向けて不屈の挑戦を重ね、災害の問題を克服してくれるに違いないと筆者は信じている。

南 正時 鉄道写真家

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みなみ・まさとき / Masatoki Minami

1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。

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