ウクライナ「投降ホットライン」ロシア兵助命願い 兵士を犬死させる祖国を見限り、生き残り図る

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これらのロシア市民は、ジョージアやフィンランド、カザフスタンやモンゴルに逃れている。カザフスタンのマラート・アクメツァノフ内相は10月4日に発表した声明の中で、9月21日の部分動員令以降、20万人を超えるロシア市民がカザフスタンに入国したことを明らかにした。

ユソフはフリーダムTVに対し、「占領軍の一員としてウクライナに配備されている兵士だけではなく、招集を受けたばかりで、まだロシア連邦の領土にいる兵士やその親族、さらには自分も招集されるかもしれないと恐れている人々からも、ホットラインに電話がかかってくる」と述べた。「開設から数週間で、投降希望者からの連絡が2000件以上入っている」

ユソフは、ウクライナはロシアと違って民主主義的な法律とジュネーブ条約に従っていると述べた。投降したロシア兵は戦争捕虜として扱われ(ユソフによれば衣服や食事が保障される)、彼らがどこに抑留されているかが国連やその他の人道支援機関に通知されることになる。

クリミア在住のウクライナ市民も、2014年ロシアに併合されたために招集を受ける可能性がある。

「我々は文明国であり、今では世界中がそれを認めている。『生きたい』プログラムは、命を救うという保障だ。兵士たちを砲弾の餌食にせず、彼らの尊厳を守り、彼らが戦争犯罪に手を染めることがないようにするためのものだ」とユソフは言う。「ロシア軍の司令部は多くの場合、兵士たちを犬死させているが、このプロジェクトはロシア兵の命を救う」

兵士の親族からも連絡が相次ぐ

ロシア外務省は4日、新たにロシアに併合されたウクライナ4州の住民について、1カ月以内に拒否の意思を示さなければ、ロシア国籍を付与すると発表した。

「生きたい」プログラムを担当するウクライナ国防省のビタリー・マトビエンコ報道官は3日、英デイリー・エクスプレス紙に対して、投降ホットラインの利用者には兵士のほかに、「息子や夫に生きていて欲しい」と願う親族も含まれていると語った。

「同プログラムでは、投降した兵士に1日3回の食事や医療を提供し、親族に連絡をする機会も保障している」とマトビエンコは述べた。「ロシア兵がウクライナで生き延びる唯一のチャンスが、投降することだ」

(執筆者:ニック・モドワネック)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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