スペイン「フリーゲージ列車」どんな仕組みなのか 日本仕様は?聞くと「相談してくれれば喜んで」

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ドイツ鉄道(DB)は、同社が誇る高速列車ICE(インターシティ・エクスプレス)の新規車両として、ホームとのステップがないことを売りにしたタルゴ製車両を「ICE L」の名で導入を決定。ベルリン―アムステルダム間を皮切りに、いずれリゾート向けの臨時列車に使う予定だという。

機関車1両+17両の客車で1組の編成とし、全部で23編成を導入する。ICEはかねてドイツの車両メーカー・シーメンスの牙城だっただけに、他国製車両の採用も興味深いポイントだ

タルゴ社は軌間可変式ではない車両を持ち込んだわけだが、イノトランス展示に当たり行き先表示板に「マドリード―ベルリン間のICE」とこっそり表示。いずれ、軌間可変式高速車両で本国スペインからドイツに入ろうとする意欲を感じずにはいられなかった。

ICE L 行先表示
ICE Lに表示された「マドリード―ベルリン」の行き先表示(筆者撮影)

ただ、タルゴといえばやはり軌間可変車両が有名だ。そこで、「日本では、狭軌と標準軌との変換が可能な車両の開発で頭を悩ませている」とタルゴの展示ブースで説明に当たっていたスペイン人エンジニアに話すと、「我が社では、狭軌から標準軌への変換車両は造ったことがない。しかし、相談してくれたら喜んで我が社のエンジニアが解決に当たるに違いない」と“お誘い”の言葉をかけてくれた。

ただ、メーターゲージ(1000mm)や、日本の狭軌(1067mm)といった狭い軌間では、変換機構やトラクションモーター、ブレーキのための車輪間のスペースに制限もあり、実用化が難しいとされる。今のところ、標準軌よりもさらに広い軌間に変換する車両しか造ったことがないタルゴにとって「標準軌―狭軌直通」の車両を造るのはかなり挑戦的と言える。

日本向けもできる?

しかし、長年の軌間可変車両生産の歴史を誇る同社の経験を考えると、時速300km超のソリューションをなんらかの形で提示するというのも夢物語ではない。海外への輸出経験も豊富なタルゴは、やはり軌間が異なるロシア向けに西欧乗り入れ用の長距離列車車両を納入していたりもする。

ICE L
タルゴがドイツ向けに製造したICE L。床面が低いのがわかる(筆者撮影)

今回の西九州新幹線の開通では、博多―長崎間をつなぐに当たり「リレーかもめ」から「かもめ」へ、武雄温泉駅で対面乗り換えという方式が採用されたが、新幹線ができたことで「同じ車両に乗ったまま目的地まで移動したいという要望」はさらに高まることだろう。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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