「人の上に立つのがつらい」あなたに伝えたい視点 いいリーダーの条件は「自分で決めないこと」

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リーダーは、情報を隠そうとしているのではありません。情報を淀ませてしまうリーダーは、自分で決めないといけない、自分が判断しないといけない、自分で責任を取らないといけない、と焦っているから、情報を抱え込んで、流通させる余裕がないのです。

決めないといけないことがあまりにも多くて、リーダーがオーバーワークになっている時にも、情報は淀みます。その時は、勇気を持って「決めなきゃいけないのに、まだ決められてないことは、以下の5つ。本当にごめんなさい。知恵を貸して下さい」と情報を流通させるのです。

もし、部内で対立があったら、リーダーの仕事は、どっちが正しいとすぐに判断することではなくて、「部内には、こういう対立がある。こっちの意見はこういうこと。

こっちの意見はこういうこと。対立点は、ここ。こっちを選ぶと、こういうマイナスとプラスがある。こっちだと、これ」と情報を整理することです。

少し肩に力が入っていませんか?

さて、一輪車さん。部活で一輪車さんは、どんなリーダーですか?

なんでも自分で考えて、自分で決めて、自分で責任を取らないといけないと、肩に力が入っていませんか?

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ちゃんと「今、私はこういう状況で大変なので、判断力が鈍っているから聞くけど、今、必要と思うことは何?」なんて、下級生と情報を共有していますか?

一輪車さんは17歳なのに、自己分析が鋭いとほめましたが、実を言うとちょっと鋭すぎるんじゃないかと思っています。なんだか考えすぎているように感じます。なんでも自分でちゃんとやらないといけない、自分がしっかりしなければいけない、自分が的確な判断をしなきゃいけないと思い込んでいるんじゃないかと心配するのです。

肩の力を抜いて、下級生の頭を使わせてもらいながら、情報を流通させてみませんか?

今、一輪車さんが目標としていること、一輪車さんが部活に必要だと思っていること、一輪車さんが悩んでいること、をフランクにオープンにみんなと共有するのです。

それは素敵なリーダーだと思いますよ。

鴻上 尚史 作家・演出家

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こうかみ しょうじ / Shoji Koukami

1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。95年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲・シナリオ賞受賞。ベストセラーに『不死身の特攻兵~軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)、近著に『何とかならない時代の幸福論』(ブレイディみかこさんとの共著/朝日新聞出版)、『演劇入門 生きることは演じること』(集英社新書)などがある。月刊誌「一冊の本」(朝日新聞出版)、ニュースサイト「AERA dot.」で『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』を連載中

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