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日本を貧しくしている「安売りだけ愛する人たち」 「安い=善」という呪縛から解放されよ

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  • 小阪 裕司 オラクルひと・しくみ研究所 代表/博士(情報学)
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また、こういう状況を逆手に取って、あえて「安さ」を売りにしてくる会社もあるだろう。今までよりいっそう安い金額を提示する、今まで1名で対応していた仕事を同じ価格で3名にて対応する、といったことである。実際にそういう競合が現れたという話を各所で聞いた。

そんな時代だからこそ、「安さにこだわる」という判断もあるだろう。その土俵で戦うことを否定はしない。しかし、安さを追求しようとすると結局、どうしても大きな企業が有利になる。大量仕入れによって原価高騰を最小限に抑えたり、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって大幅なコスト削減が狙えるからだ。

それでもコスト削減は容易ではないだろう。10円、20円のコストカットのために、各社は厳しい戦いを繰り広げることになる。そして、やっとの思いで10円の値下げを実現したところで、今度は12円の値下げをした競合に売上をごっそり奪われることになる。

「頑張って価格を維持」はもうやめよう

つまり、もしあなたが「安さ」で勝負しようとするならば、そのような、1円を巡る厳しい戦いを覚悟しなくてはならないことになる。ならば、多くの企業は消費者が持つもう1つの顔のほう、すなわち「生活必需品への出費を削ってでも使いたいもの」へのシフトをこそ目指すべきではないだろうか。

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日本企業は企業努力により、価格上昇をなるべく抑えてきた。その努力がどうにもならなくなってきている今、その常識を捨て去るときだ。

日本語ではそもそも、「頑張ります」「勉強します」という言葉が値下げを指すくらいだが、そのことがいまだに「良い商品を安く普及させることこそが重要」という、戦後の日本の常識が色濃く残っている証拠だ。もちろん、そうした時代を作ってきた先人たちには感謝をしつつ、今こそそこから脱却すべきなのだ。

「安いこと=善」「高いこと=悪」という常識を捨て去ること。言い換えると、価格維持のため、あるいは値下げのために「頑張るのはやめる」と決断すること。それが、価格上昇時代にうまく対処するためのスタートだ。

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