整形外科医が解説「骨盤のゆがみと不調との関係」 代謝の低下、冷え、肥満などの原因といわれるが

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――「骨盤のゆがみ」とか「骨盤矯正」って何なんでしょうか?

Koala:「骨盤のゆがみ」も「骨盤矯正」も、医学用語や医学的処置の言葉ではありません。しかも「骨盤矯正」はある施術院によって商標登録されている言葉です。ただ、近年は数多くの施術院が「骨盤矯正」という医学用語っぽい言葉を宣伝に利用していますよね。

「骨盤矯正」の意味は施術院でそれぞれ違うようですが、多くは手技によって「何らかの原因でゆがんだり傾いたりした骨盤を正しい位置に戻す」「何らかの原因で開いた骨盤を締める」といった意味で使っていることが多いようです。

ただ、先に述べたように骨盤は簡単にゆがんだり傾いたり開いたりしませんし、また人の手の力ではどうもできないんですよ。

――では、骨盤がゆがむこと自体「ない」と考えていいんでしょうか。

Koala:「骨盤がゆがむ」という言葉を「骨盤が変形する」と考えた場合、日常生活動作で骨盤が変形することはありませんが、特殊な状況では変形することはあります。

例えば、交通事故などの外力による骨盤の骨折です。この場合、「手で矯正する」なんて悠長なことを言っている場合ではありません。骨折の程度にもよりますが、入院したり、場合によっては手術が必要になることもあります。

妊婦に起こる「恥骨結合離開」

――骨折ですか⁉︎ ほかに骨盤の形が変わることはありますか?

Koala:あとは妊娠・出産時ですね。女性は妊娠中にリラキシンというホルモンが分泌され、全身の骨と骨をつないでいる靱帯結合や関節が緩みます。赤ちゃんが生まれてくるときに骨盤を通り抜けられるよう、そういった仕組みになっているわけです。

ただ、その場合でも、骨盤は本が開くようにパカッと開くのではなく、緩むだけ。ただし、全産婦さんの1%未満とごく稀ですが「恥骨結合離開」といって、恥骨結合部分が数センチくらい開いてしまうことがあります。

――恥骨結合離開になった場合、自覚できるものでしょうか。

Koala:もちろん、わかりますよ。恥骨結合離開になると、激しい痛みを感じるので、気づかないことはないでしょう。実際、うちのクリニックにも産婦人科からの紹介で受診される方がいますが、出産後も強い痛みが続きます。ちょっと痛いとか、不調といったレベルではありません。

出産と違って、恥骨結合離開は保険診療の対象となるので、激しい痛みがある場合は産婦人科や整形外科で診断してもらったほうがいいでしょう。

――出産後も骨盤が緩んでいるからケアが必要だと聞くことがあります。

Koala:最近は「産後骨盤矯正」を宣伝している施術院も多いですね。産後2〜10カ月くらいに骨盤を矯正するとよいと宣伝しているのをよく見かけます。なかには「産後すぐに施術しないと痛みが残る」「骨盤が開いたまま戻らなくなる」といった表現を使うところもあるようですが、これは行きすぎですね。

確かに出産によって骨盤は緩むんですが、数カ月が経過すれば、特に何もしなくても自然と元に戻っていきます。何かをしなければ元に戻らない、というわけではありません。だって、考えてみてください。もし出産で緩んだ骨盤が自然に元に戻らないのであれば、太古の昔から女性は出産すると骨盤が緩みっぱなしになって、日常生活に差し支えていたことになってしまいます。そんな事実はありません。

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