秋のご馳走「白トリュフ」とはいったい何なのか 採取解禁の10月以前に東京で提供される「謎」
10月初旬から食べられる白トリュフだが、気温が下がり、どんよりと霧が辺りを覆うようになる11月中旬あたりから、香りがより濃厚になってくるという。ピエモンテ州に26年暮らし、少し知恵をつけた私は、収量が安定せず値段が高い10月の初物を狙うより、シーズン終了直前あたりの香りが高く値段が落ち着く頃を狙う。
トリュフを扱う人や、料理人の知り合いからなど、毎年チャンスを見つけては直接買うなどして、自宅で味わうのだ。とくに気に入っているのは、50グラム程度の小さな塊を買って、目玉焼きに削りかけて食べる方法。卵料理ととても相性がいいと言われる白トリュフの、シンプルかつ、ベストな食べ方の1つだ。ゴルフボールほどもない小さな塊が50グラム、それで1万円越えは私のお財布にはかなり重荷だが、年に一度の贅沢として楽しみにしている。ピエモンテ産の赤ワインがとてもよく合う。
日本で提供される白トリュフの謎
もともとは地元の人だけで楽しんでいた季節の味白トリュフが世界的なブームになった影響か、最近の日本では白黒なんでも、トリュフ全体に注目が集まり、食べられるところが増えたと聞く。高級レストランはもちろん、日本料理店でも和食とトリュフを合わせたり、果てはファミレスのメニューにまで登場しているというから、遠くイタリアに住む私はびっくりである。10月からしか収穫できないと法律で決められているのに、8月や9月頃に東京あたりのレストランが「ピエモンテ産白トリュフ入荷しました」などとSNSに投稿しているのを見て、不思議に思うこともある。産地偽装なのか、何かの間違いなのかはわからない。
前述の富松さんに、安心して本物を食べるにはどんな店へ行けばいいのかを聞いてみると「トリュフのことをよく知っていて、できるだけいろいろ説明してくれる店は信用できるかもしれません」ということ。あまり説明してくれないのは、その人自身がトリュフを選ぶ基準を知らない証拠だという。
そうなると信用できる範囲は自ずと狭められてくる。もしかしたら、とても高価なものに限定されるかもしれない。だがそれでいいのではないかと私は思う。本物のトリュフを食べてみたい人は高いお金を払ってでもその価値を知り、文化に敬意を払う。その分、ほかの何かを節約したり我慢することがあるかもしれない。一方で、なんちゃってトリュフかもしれないけれど、お手頃に気分だけ味わい楽しむ人がいてもいい。何に重きをおくのかは、人それぞれ違うからだ。
ただし、それぞれの文化にリスペクトの気持ちを忘れないでほしいと思う。簡単に(もしかしたら違法に)輸入されたものだけを食べて、「トリュフなんてこんなもの」と思われたら、何世代もかけてつないできたトリュフをめぐる文化や、それを大切に思い、関わっている人たちに申しわけがない。それは世界中のすべての食、すべての文化に言えることではないだろうか。
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