日立、大型買収で念願の欧州鉄道事業に進出 鉄道ビッグスリーの牙城に食い込めるか

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欧州の信号システムは世界標準

2社同時の買収だが、ブレダは抱き合わせで買わされるのが実情。本当に欲しかったのは信号事業で世界2位、14%のシェアを持つSTSだ。

ここでいう信号とは単純な信号表示機ではなく、列車制御なども行う高度な運行管理システムのこと。高い技術力が必要なので、参入は難しく、好採算だ。日立が持つ日本の運行管理の技術は、欧州とは仕様が異なる。欧州の信号システムは世界標準になりつつあり、今この分野を獲得できる意義は大きい。

日立は11年ごろからSTS買収へ向けフィンメカニカと水面下で接触を進めてきた。だが、フィンメカニカの株式の一部を握る政府が雇用確保の観点から買収に否定的で、交渉は進まなかった。14年8月に交渉が公になってからも折り合いがつかず、「長い折衝を行ってきた」(中西CEO)。

その間、8月初旬には7.3ユーロぐらいだったSTSの株価は上昇を続け、買収発表の前日には8.835ユーロになった。交渉の途中で中国のハイテク企業、浙大網新(インシグマ)が参戦してきたことで、「値段が上がったことは否定できない」(日立関係者)。為替も11年当時と比べれば大幅に円安に振れており、残るSTSの60%分のTOBまでにさらに円安が進む可能性もある。

また、ブレダについては、約300億円(14年12月期)の赤字を出し、納期遅延や車両の不具合を頻発させているにもかかわらず、雇用も継続することで合意させられている。

ただ、この“お荷物”がついてくるにしても、今回の買収は日立が進めるパズルにとっては必要なピースだといえる。今後、ビッグスリーの背中に迫るには、実績を積むスピードが問われる。

「週刊東洋経済」2015年3月7日号<2日発売>「核心リポート05」を転載)

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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