カタール航空、なぜ日本撤退説が流れたのか 羽田-ドーハ線の制約とエミレーツの影

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またエミレーツ航空に対抗すべく、サッカーのスペインリーグ「リーガエスパニョーラ」の強豪FCバルセロナと2013-2014シーズンから3シーズンのスポンサー契約を締結している。かつてはトルコ航空がFCバルセロナとスポンサー契約をしていたが、条件的に上回ったことが想像できる。

エミレーツ航空は、同じくスペインリーグのレアルマドリード、イタリアリーグ「セリエA」で本田圭佑選手が所属するACミランをはじめ、イギリス「プレミアリーグ」のアーセナルにおいてはスポンサー契約に加えてスタジアムの命名権(エミレーツスタジアム)を獲得している。ヨーロッパ各リーグの人気チームを複数スポンサードしているが、カタール航空はFCバルセロナに集約しており、FCバルセロナの選手が総出演のカタール航空のテレビコマーシャルのインパクトは大きい。

このコマーシャルが、カタール航空の知名度を世界的に上げたことは間違いない。本拠地であるドーハ・ハマド国際空港の大型ビジョンでも、エースであるメッシ選手を中心に、FCバルセロナの選手がカタール航空のビジネスクラスに座るシーンが頻繁に流されており効果も絶大であるが、一部海外メディアの報道によると、将来的にはFCバルセロナの本拠地であるカンプノウの命名権をカタール航空で取得するのではないかという動きもあるようだ。

敵はエミレーツだけではない

ただ、中東エアラインという観点で見ても、カタール航空の敵はエミレーツ航空だけではない。同じくUAEのアブダビ空港を拠点とするエティハド航空も侮れない。総2階建て飛行機のエアバスA380型機を積極的に投入し、マンションの1室のような居住空間のファーストクラス「ファースト・アパートメント」を設定。保有機材数も2020年までに150機以上に拡大し、新ターミナルも2017年にオープンする予定であるなど、カタールにとって脅威の一つになりそうだ。

カタール航空にとって、日本撤退説の根拠として報道された羽田の発着時間の制限は、日本路線の課題として残り続ける。「日本からは撤退しない」と強く表明したことを盾にして、カタール政府も巻き込み、今後、日本政府へ何らかの要望を求めることがあるかもしれない。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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