カタール航空、なぜ日本撤退説が流れたのか 羽田-ドーハ線の制約とエミレーツの影
一方で、このような観測報道がなされたことは驚きでもあった。
カタール航空は、もともと1994年に地域航空会社としてスタート。1997年にバクルCEOが就任した後、積極的にネットワークを拡大し、現在146都市へネットワークを構築している。
2014年に羽田-ドーハ線を就航
中東エアラインとしては、最も早く日本路線に参入。2005年に関空―ドーハ線、2010年には成田―ドーハ線を就航したのに続き、つい昨年の2014年6月には新たに羽田―ドーハ線の運航を開始したばかり。日本の経済紙・誌の目立つ位置へ積極的に広告を出稿するなど、日本のユーザーの取り込みを重視している戦略が見えていたからだ。
一方で、カタール航空をめぐる競合環境は厳しさを増している。圧倒的な資金力を誇るUAEのドバイを本拠地とするエミレーツ航空が、瞬く間に世界中にグローバルなネットワークを確立。世界の主要エアラインの輸送実績を有償旅客キロ(RPK)という指標で見ると、2013年実績ではエミレーツが世界5位なのに対し、カタールは25位以内にもランクインしていない(Flightglobal/Airline Business調べ)。ブランド力でみても、エミレーツ航空に水をあけられてしまっている。
そんなカタール航空が今、日本路線から撤退するのは逆にリスクがある。中国やシンガポールなどの隣国が台頭しているとはいえ、日本は依然として世界経済における重要な地域であることには変わりがない。2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催も控えている。そこで仮に日本撤退となれば、世界中をターゲットとするカタール航空においては致命傷となり、エミレーツ航空との闘いの完全敗北を意味することにもなりかねない。
そんな巨大な王者に君臨するエミレーツ航空との差を詰めるべく、この数年のカタール航空は、ネットワーク拡大や新空港のオープン、世界で初めてとなるエアバスA350の導入、日本~ヨーロッパルートにおけるエミレーツ航空以上の割引運賃を出すなど攻勢を強めている。機材においても、現在、147機の航空機を保有しているが、ボーイング777Xを100機発注するなど、更に335機の航空機を購入予定だ。
例えば、2014年5月にオープンしたドーハ・ハマド国際空港は、ターミナルの面積は60万平方メートル。年間3000万人の利用者に対応し、数年後には5000万人対応となる予定だ。カフェとレストランが合わせて30店、免税店をはじめとした物販店も70店以上が入るターミナルで利用者の評判も上々である。
特に日本からヨーロッパへの航空券が安く、航空券だけ購入する旅行者だけでなく、ヨーロッパ行きのパッケージツアーでもカタール航空利用が増えている。路線網の拡大により、日本人にとってはドーハからのヨーロッパ各都市へネットワークもエミレーツ航空と変わらず、エミレーツ航空以上に機内サービスが良いという声も多く聞かれる。実際、英スカイトラックス社が実施しているエアラインの格付けにおいて、ANA(全日本空輸)を含めて世界で7社しか獲得していない5つ星を手にしている。
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