世界の格差が「西側の政策」で縮小しない根本原因 「普遍的な構造改革をすれば解消できる」は誤解

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現在の繁栄の最も深い起源を突き詰めようとすると、すべてが始まった時点、つまり今から何万年も前に人類が初めてアフリカから足を踏み出したときに行き着く。

その出アフリカの道筋によって部分的に決まった各社会の多様性の度合いは、人類史全体にわたって経済の繁栄に長期的な影響をもたらしてきた。そして、技術革新を誘発する「交雑」と社会の結束の両面でスイートスポットをうまく捉えた人口集団が、最も大きな恩恵を受けた。

普遍的な繁栄のカギを握るもの

ここ数十年で、かつて貧しかった国々にも急速に発展が広がり、成長を促すような文化や制度の特性が世界各地で導入され、発展途上国の成長に貢献してきた。

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現代の輸送や医療技術や情報技術のおかげで、地理条件が経済の発展に及ぼす悪影響が減ったし、技術の進歩に弾みがついたおかげで、多様性が繁栄にもたらす潜在的な利益もさらに大きくなった。

もしこうした流れを、多様な社会では人々の結束を強めるのを可能にする政策に、均質な社会では知的な「他家受粉」の恩恵を受けるのを可能にする政策に、それぞれ結びつけたなら、現代に存在する豊かさの格差に、まさにその根本から取り組み始めることができるだろう。

今日、タンナ島には本物の空港がある。小学校には、ほとんどの子どもが通える。島民は携帯電話をもち、ヤスール火山や伝統文化に引かれて島を訪れる観光客はあとを絶たず、それが地元の経済に不可欠の収入をもたらしている。島が属するヴァヌアツ共和国の1人当たりの所得はまだごくささやかだが、それでもこの20年で倍以上になった。

国家の運命には歴史が長い影を落としているとはいえ、その運命はけっして石に刻まれたように変えようがないわけではない。人類の旅を支配してきた巨大な歯車が今も回り続けている以上、未来志向や教育や技術革新を促し、男女平等や多元主義、差異の尊重を進めるような方策こそが、普遍的な繁栄のカギを握っているのだ。

オデッド・ガロー ブラウン大学経済学教授

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Oded Galor

ルーヴァン・カトリック大学およびポズナン経済大学から名誉博士号を授与される。アカデミア・ユーロペアの外国人会員(名誉会員)。計量経済学会の選出フェロー。「経済成長ジャーナル」の編集長を務める。「統一成長理論」の創始者。

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