世界の格差が「西側の政策」で縮小しない根本原因 「普遍的な構造改革をすれば解消できる」は誤解

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遠い昔に生まれた制度や文化、地理、社会の特性は、それぞれの文明に独自の歴史の道筋をたどらせ、国同士の豊かさの格差を生んできた。経済の繁栄を助ける文化や制度を徐々に採用したり形成したりできることには議論の余地がない。

地理条件や多様性のさまざまな面から生じた障壁は減らすことが可能だろう。だが、各国が歴史の旅を続けるなかで現れた独自の特性を無視した介入は、格差を軽減しそうになく、逆に欲求不満や混乱や長引く停滞を引き起こす危険がある。

グローバル化と植民地化の非対称性が広げた格差

格差のおおもとを取り巻いているのが、グローバル化と植民地化の非対称の影響だ。グローバル化と植民地化は、西ヨーロッパの国々の工業化や発展のペースを速める一方、発展の遅れた国々が貧困の罠から逃れるのを遅らせた。世界の一部の地域では、既存の経済の不平等と政治の不平等を永続させるように作られた収奪的な植民地制度が持続したため、国家間の豊かさの格差をさらに広げることになった。

とはいえ、植民地時代の支配や搾取や非対称の貿易といったこれらの力は、植民地時代以前の不均等な発展にもとづいていた。政治と経済の制度にも、社会に浸透している文化規範にもすでに地域差があり、その差が発展の速さと、停滞から成長の時代への移行の時期を大きく左右した。

人類の歴史の重要な節目で制度改革が行われたり、異なる文化的特性が出現したりすると、それぞれの社会が別の成長の道を歩み始めることがあった。それでもランダムな出来事は、私たちの目には劇的で重大に映るかもしれないものの、人類の旅全体の中では束の間の、たいていは限られた役割しか果たしてこなかったし、過去数世紀のうちに国や地域間に経済の繁栄の差をもたらした主な要因だった可能性はきわめて低い。

初期の大文明がチグリスとユーフラテス、ナイル、揚子江、ガンジスといった大河周辺の肥沃な地帯で生まれたのは、けっして偶然ではない。歴史や制度や文化がランダムに発展しただけでは、水源から遠く離れた場所に古代の大都市が造られる引き金にはなりえなかっただろうし、雪と氷に覆われたシベリアの森の奥やサハラ砂漠の真ん中で革命的な農耕技術が発達することもありえなかったはずだ。

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