世界の格差が「西側の政策」で縮小しない根本原因 「普遍的な構造改革をすれば解消できる」は誤解

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格差のおおもとでは、地理や遠い過去に根ざしたさらに深い要因が、世界の一部の地域では成長を促すような文化の特性や政治制度の出現をしばしば下支えし、別の地域では成長を阻むような文化の特性や政治制度の登場を後押しした。

中央アメリカなどでは、土地が大規模なプランテーションに適していたため、搾取や奴隷制度や不平等を特徴とする収奪的な政治制度が現れ、持続した。サハラ以南のアフリカをはじめとするその他の場所では、病気が蔓延しやすかったので農業や労働の生産性が上がらず、進んだ農業技術の導入や人口密度の低下、政治の中央集権化、長期的な繁栄が遅れた。

それにひきかえ、もっと幸運な地域では、恵まれた土壌や気候の特性のおかげで、発展につながるような文化の特性の出現が促され、協力や信頼、男女平等、強力な未来志向の考え方を重視する傾向が生まれた。

農業の技術で先行した強みを消した産業革命

1万2000年前の農業革命の黎明期に、生物がどれほど多様か、家畜化や栽培化ができる動植物がどれだけあったか、大陸がどういう方向に広がっていたかによって、狩猟採集型の部族から定住型の農業共同体への移行が早く起こった場所もあれば、遅れた場所もあった。

そして、ユーラシア大陸でも農業革命が早く起きた地域は、技術で先行することができ、その優位は産業革命が始まる前までずっと続いた。

しかし、ここが肝心なのだが、農業へ早く移行するのを助けた有益な力の数々は、産業革命以降は消えてなくなり、結局、今日の世界に見られる巨大な格差の形成にはわずかな影響しか及ぼしてこなかった。

農業への移行を早々に経験した社会は、現在非常に繁栄している国になるようには運命づけられていなかった。それは、農業へ特化したせいで、やがて都市化が妨げられ、技術面で先行した強みが帳消しになったからだ。

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