西九州新幹線「現地の盛り上がり」は本当なのか? 部分開業は「終わりの見えない戦い」の始まり

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長崎県と、武雄温泉駅から博多駅(新鳥栖駅)側での新幹線着工を認めない佐賀県との関係も、難しい。

福岡県と鹿児島県を結ぶ九州新幹線も、まず南側の新八代―鹿児島中央間から部分開業した。しかし、北側の博多―新八代間の開業が見えていての部分開業である。一方の西九州新幹線はまだ「ゴール」が見えていないのがつらい。

「そもそも西九州新幹線を造る意味がなかった」という意見もあるが、その是非はさておき、部分開業でも博多―長崎間の所要時間が約30分短縮され、現在の在来線特急「かもめ」からの利用者移動などが起こるため、一定数の利用は見込まれる。

そこから、いかに乗客を増やしていくか。そのために佐賀県、長崎県、そしてJR九州がどう活性化していくか、沿線が盛り上がっていくか。その未来が見えないと部分開業の状態が固定化し、「意味がなかった」の考えも現実味を帯びる。

西九州新幹線は「負の遺産」になるのか?

前出の久米さんは、西九州新幹線の開業にあわせて9月13日から、在来線の大村駅周辺で「西九州新幹線開業記念イベント カモン!オオムラ!」を開催。「新幹線かもめアート展」「新幹線かもめ追っかけ写真展」の実施、飲食店で新幹線「かもめ」にちなんだメニューの提供などを行っている。その目的の1つとして、大村の人に新幹線の開業や、大村に新幹線が来る意味を改めて考えてもらい、大村の皆で西九州新幹線を盛り上げていきたいという思いがある。「アートは問い、デザインは答え。そして、この展覧会は問い。それで大村の人たちが何を思ってくれるかの問いかけ。西九州新幹線は、大村が引っ張るぐらいの勢いでやればいい。美しい大村湾の夕日や空港があり、移住してくる人も多い大村は、そのポテンシャルを持っている」。

久米さんは長崎県内で絵画教室も行っており、子供たちに新幹線「かもめ」の話をして、誰と乗りたい、どこに行きたいと想像させながら、その絵を描かせることもあるという。

「子供たちが未来、将来を考えるきっかけとして、そのように『新幹線』を使えるのは恵まれたこと。生まれたときからあるものよりも、新しくできたものなら、なおさらだ。子供たちが未来を描いて、仕掛けていけば、またその未来につながっていく」

建設について、さまざまな意見がある西九州新幹線。実際に開業を迎えるいま、将来それを「負の遺産」と呼ばせないようにする継続的かつ建設的な取り組みに期待したい。

恵 知仁 鉄道ライター

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めぐみ・ともひと / Tomohito Megumi

鉄道を中心に、飛行機、船といった乗り物全般やその旅について、取材、記事執筆、写真撮影、書籍制作などを行ってう。子供のころからの鉄道好き、乗り物好きで、日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車(完乗)。2014年にウェブメディア「乗りものニュース」を創設し、約6年間、初代編集長を務めた(現在、そのメディアならびにその運営会社とは無関係)。2級小型船舶免許取得。早稲田大学第一文学部卒業。

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