西九州新幹線「現地の盛り上がり」は本当なのか? 部分開業は「終わりの見えない戦い」の始まり

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2020年、筆者も登壇した長崎県主催の「令和4年秋開業!九州新幹線西九州ルート開業フォーラム」において、大村市の園田裕史市長は「新幹線を生かした街づくり」をしていきたいと、熱のこもった挨拶をした。

大村市のグラフィックデザイナー久米真弓さん(写真:恵 知仁)

しかし、諫早市出身で大村市在住のグラフィックデザイナーで、地域情報サイト「ビーハッピーおおむら」を運営する久米真弓さんは、「大村は車社会で、列車に乗らない人が多い。『新幹線は乗り換えが面倒らしい』と言っている人も少なくない」と話す。

「新幹線開業にあたって大村市はアクションプランをつくり、市民向けにいろいろな取り組みをしているが、そもそも大村には、新幹線に乗ったことがないどころか、列車自体にほとんど乗らない人が多い。きっぷの買い方、乗り方がわからない人も多い。これまで大村から福岡へ、鉄道で行く人はほぼいなかった。だから鉄道で早くなると言われても、ピンとこないのかもしれない」(久米さん)

また久米さんは、「大村の人は車社会で、鉄道にあまり縁がないので、部分開業だとか、報道のネガティブなところばかり真に受けているところがあるようだ」とも言う。

全国で地方の人口が減少し、長崎市も例外ではないが、大村市は2019年の人口が9万5062人、2022年9月の人口が9万6436人と、上昇傾向が続いている。大村市には海に山、そして長崎空港もある。久米さんは「住みやすい、暮らしやすい街」という。西九州新幹線の開業に、いまいちピンとこない人が大村市で少なくないのは、現状に大きな不満がないことの表れともいえそうだ。

開業は「終わりが見えない戦い」の始まり

西九州新幹線でまず危惧されるのは、「祭りの後」だ。

開業直後の文字通りの「祭」、そしてデスティネーションキャンペーンのあと、西九州新幹線はどうなるのだろう。長崎県は盛り上がれるだろうか。大村市民は「新幹線」を移動の選択肢に加えるだろうか。

そもそも佐賀県民の間では新幹線に複雑な思いがある。2022年9月、佐賀のあるメディアが西九州新幹線の部分開業日を「葬式の日」と表現した。これに対し、新幹線の駅ができる佐賀県嬉野市の村上大祐市長はツイッターで「鹿島市・太良町の皆さんが複雑な思いを抱えていることは理解できます。だからこそ官民で話し合いを重ねてきました。『葬式』というのは失礼極まりない」と抗議。佐賀県武雄市の小松政市長と市議会も、抗議の申し入れ書を送った。

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