「クリスピークリーム」がコロナを機に好調のワケ 大量閉店から5年、同社に訪れた「ある変化」

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ほかにもコロナ禍が後押しして伸びた事業がある。2019年末からスタートした小売り事業だ。スーパーマーケットなどの小売店に設置したキャビネット(陳列棚)から、客が自分で商品をとって購入する。巣ごもり需要の高まりもあって急成長し、2022年6月末時点で約150カ所にキャビネットを設置している。

「近くに店舗がない」という消費者からの不満の声に応えて始めたサービスだというが、出店に比べ家賃や人件費等のコストも低く、かつブランド認知アップを見込めるなど、社にとっても大きなメリットがある。

これらを受けて同社では2019年以降を再成長期と位置付け、「タッチポイント拡大」「ブランド価値の向上」の2軸で成長戦略を進めていくとしている。

実店舗のうち半数はテイクアウト専門店

まず、店舗数の拡大やデリバリー、卸売事業によってタッチポイントを稼ぐ。なお、増やしてきた店舗の中にはテイクアウト専門店も含まれる。

コロナ禍でテイクアウト専門店にシフトしたチェーンは多いが、ここでも同社は時代を先取っており、2018年からスタートを切っている。テイクアウト専門店は家賃や人件費の面で低コスト化を図れる。たまたま、コロナ禍での需要にも適していたわけだ。現在の実店舗のうち半数程度はテイクアウト専門店となっている。

広いイートインスペース。東京国際フォーラム内という立地から、観光客やインバウンド需要も視野に入れている(撮影:尾形文繁)

一方、「ブランド価値の向上」を担う立役者とも言えるのが、オリジナル・グレーズド、そしてドーナツシアターを備えたフラッグシップ店だ。

生地の食感にそのおいしさの大部分があるオリジナル・グレーズド。実は、時間が経つと生地が固くなり、似て非なるものになってしまう。電子レンジで8秒温めればできたてに「近い」おいしさになるのだというが、どうせ食べるなら、一番おいしいできたてを味わいたいと思うのは当然だ。

そうした希望をかなえるのが、店舗内でオリジナル・グレーズドを製造しているドーナツシアターだ。

なお、店内に掲げられた「HOT LIGHT」の電飾が赤く点灯しているときは、ドーナツシアターが稼働している。つまり、できたてのオリジナル・グレーズドが食べられるサインだという。ドーナツシアターについて、若月氏は次のように説明する。

「お客様の反応を見ていると、お子様はもちろん、大人のお客様も楽しそうにじっと見入っている。ワクワクを体験いただける場、また、商品品質の信頼性やフレッシュさを伝えられる場になっていると考えている」(若月氏)

ドーナツシアターを設けた店舗としては2008年に出店した船橋ららぽーと TOKYO-BAY店、2021年にリニューアルした渋谷シネタワー店が展開されている。

ドーナツ・シアター。オリジナル・グレーズドが製造される様子は工場見学としてのエンターテインメントを提供するほか、商品の新鮮さや信頼性を伝える役割も果たしている(撮影:尾形文繁)
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