「クリスピークリーム」がコロナを機に好調のワケ 大量閉店から5年、同社に訪れた「ある変化」

拡大
縮小

オリジナル・グレーズドはシンプルなドーナツだけに、素材の味がダイレクトに感じられる。ブランドの本質的な力を示すという意味で、まさに看板を背負う商品だ。ブランド価値の形成に重要な役割を果たしており、これまで、および今後の再成長においてキーとなる存在だ。

さて、若月氏の言う「再成長」の中身についても説明していこう。まず店舗数については、ピーク時の64店舗に近い60店舗(2022年中の見込み)まで再拡大している。さらに高級スーパーマーケットを中心に展開する卸売事業も合わせれば、全国に200カ所以上の拠点を持つまでに至っている。

こうした店舗拡大を支えているのが内部の改革だ。2016年当時、64店舗から44店舗に縮小したのもその一貫であった。改革にあたって重視したのが既存店の立て直しだ。若月氏は「顧客満足度」「従業員満足度」「既存店売り上げ」の3つの指標を設け、業務の改善を行ったそうだ。

結果、顧客満足度は2016年に比べ19%増、従業員満足度は7%増、既存店売上高は2017年8月以降30カ月連続プラスとなっているという。

いち早くデリバリーサービスを導入

そしてコロナ禍を期に、会社全体の業績がプラスに転じた。

この理由として1つには、ウーバーイーツが2016年秋に上陸の際、いち早くデリバリーを導入したほか、並ばずに購入できる「クイックオーダー」等のデジタルサービスを早期に展開していたことが挙げられる。

上記にコロナ以前から取り組んでいたおかげで、デリバリー、非接触の対応にスムーズに移行でき、売り上げの伸びにもつながったわけだ。

しかし、食事ならともかく、スイーツのデリバリーニーズがそれほど高いものなのだろうか。若月氏の説明によると、「コロナで一気に伸びた」という。

「社内でも、デリバリーのニーズについてはコロナ以前は懐疑的な声があった。またコロナを機にドリンクをデリバリーでも扱うことにしたが、デリバリーで注文する人はいないだろうという意見もあった。しかし、実際にはドリンクの注文も多く、中にはドリンクだけを注文する人もいた。こうした意味において、コロナはやりたいけどできなかったことに挑戦できる、改革しやすい時期だったとも言える」(若月氏)

次ページ2019年末からは小売り事業も開始
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT