バーバリーは三陽商会から離れて勝てるのか 蜜月関係を終えたあとに待ち受ける試練
ただ、カネボウやデサントと、三陽商会には大きな違いがあります。それは三陽商会がバーバリーと決別しても、次に備えるために一定の時間があったということです。
三陽商会とバーバリーは、1970年に初めてライセンス契約を交わしたあと、再度1999年にその先20年の契約を結びます。一方、英国バーバリー社では「国ごとに品質にばらつきがあることはブランドイメージを損なう」という問題意識が浮上。「世界統一戦略」として、直営化が急がれます。そのために2009年に三陽商会とバーバリーは契約期間を見直し、5年短縮して今回の2015年6月までになったのです。
つまり、蜜月関係の終了は既定路線でした。問題はここから先です。2009年以降、決算説明会のたびに記者やアナリストが心配して投げかけるバーバリー社との契約解消、バーバリーブランドのライセンス終了についての問いかけに対しては、その都度「現在交渉継続中」という意味の答えが返されていました。
ただ、残念ながら、この5年間ではっきりしたことは、英国バーバリー社が「世界戦略」を着々と推し進めたという事実だけでした。三陽商会には、日本企業にありがちな根拠のない楽観的な見方があったかもしれません。「カネボウやデサントには与えられなかった5年という猶予期間で本気の準備をすれば、次期ブランドの開発や既存ブランドの強化などができ、バタバタと慌てる必要はなかった」とは、アパレル業界で複数の関係者に共通する見方です。
「大衆的なプレミアムブランド」からの脱却
一方で、今後日本で展開する英国バーバリーはどうなるのでしょうか。いろいろな意味で「世界戦略」を着々と進めてきたとはいえ、ここは日本です。品質に関しては、世界でいちばん厳しい国民性を持っているのが日本人です。
「世界戦略」を遂行するうえで「国ごとに品質にばらつきがあることはブランドイメージを損なう」とは言っても、これは「日本を除いた国の話である」ことを、英国バーバリー社の現場担当者は理解しています。
実際に英国バーバリー社において、英国製のポロシャツと他国製のポロシャツを比較した時に、その「襟の立ち具合や縫製、シルエットの美しさなどは、日本製が群を抜いていた」ことはバーバリー現場担当者の間では周知の事実です。
そんな事実とは関係なく、英国バーバリー社のアジア・パシフィック最高経営責任者(CEO)のパスカル・ペリエ氏は日本で現在16の直営店舗を、3年後には30~55店舗に拡大しようともくろんでいます。「バーバリーは大衆的なプレミアムブランドではなく、ラグジュアリーブランドとして、立地を厳選し、高級感のあるブランドイメージを作り上げていく」とコメントしています。
果たして、大衆的なプレミアムブランドと言われようとも、三陽商会が作り上げてきた、キチンとしたつくりの商品を購入してきた顧客を、2倍以上の価格の英国バーバリー社の商品へ誘導できるのか。
それとも、厳選された立地条件の下に、富裕層だけをターゲットにした新たな顧客づくりを進めて、本当の意味でのラグジュアリーブランドとしての地位を確立していくのか。ヨーロッパ各国だけではなく、日本製の確かな商品に慣れ親しんできた、中国をはじめとしたアジア各国の顧客をも巻き込んでの厳しい「世界戦略」が待っています。
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