バーバリーは三陽商会から離れて勝てるのか 蜜月関係を終えたあとに待ち受ける試練
やがて日本のバーバリーブランドが大きく変わる瞬間がやってきます。1996年に18~25歳の女性をターゲットにしたブランド、バーバリー・ブルーレーベルが発表。その名前を一気に押し上げるニュースが翌1997年に起こります。あの安室奈美恵さんが、自身の結婚発表記者会見の時にブルーレーベルのチェックのミニスカートを身に着けてテレビに登場したことです。
当時、アムラーと呼ばれていた彼女のファンの購買意欲はすさまじく、記者会見の翌日には東京中の店から当のミニスカートが売り切れたという伝説が残っています。そのころから前後して、バーバリーのマフラーも女子高生のお気に入りアイテムとなってきてはいましたが、彼女の登場で1990年代後半以降は女子高生必須アイテムに変わります。この時から、バーバリーというブランドを特別に意識していなかった各年代層の多くの女性をも巻き込んだ、トレンド満載のトータルブランドとして売れに売れます。
不思議なもので娘さんがカッコいいと、そのお父さんもカッコいいと勝手に思い込まれてしまうようです。ブルーレーベルが売れ出すと、バーバリー本体も徐々に注目を浴びるようになります。
トレンドを取り入れた新たな世界観を醸成
そのうちに、シャープでカッコいいお兄さんも現れます。1998年には25~35歳前後の男性を主なターゲットにした「バーバリー・ブラックレーベル」が発表されます。「バーバリーは年齢的には父親が着るブランドだな」と思っていた若い世代の男性が、あのブルーレーベルの男性版だという認識で一斉に飛びつきました。それからやっと、親元でありお父さんのようなブランドのバーバリーが注目を集めるようになっていきます。
やがてこの三陽商会が生んだブルーレーベル、ブラックレーベルはアジア各国でも絶大な人気を得るようになります。もともと家柄がよかった地味なお父さんが、娘とその兄の活躍によって脚光を浴びるようになってきたというのが、日本におけるバーバリーブランドの成長過程です。
今ほど中国市場が大きくなる前は、どの外資系ブランドにとってもアジアにおいては日本が最大のマーケットでしたから、日本での動向が世界のブランドの方向性を左右する時がありました。バーバリーにおいてもその傾向は例外ではなく、世界中のバーバリーブランドが、トレンドを取り入れたブランドとしてその世界観を作り上げていきます。
世界市場への影響はもちろんですが、特に日本におけるバーバリーブランドの発展には、三陽商会が生んだ派生ブランドのブルーレーベル、ブラックレーベルの存在なくしては、ここまでの拡大はありえなかったことになります。
三陽商会は2月13日、決算説明会を開き、今年度2015年12月期の業績予想を発表しました。売上高は前期比13%減の960億円、営業利益は同約7割減の32億円まで縮小する見通しです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら