政府が新型コロナウイルスの水際対策の大幅緩和を急いでいる。24年ぶりの水準となっている円安を生かし、外国人観光客の呼び込みを図るのが狙い。エコノミストからは経常収支の改善につながり、円安の「歯止め」になるとの見方も出ている。
木原誠二官房副長官は11日、水際措置の緩和について「足りていない」としてさらなる対応が必要との考えをフジテレビの番組で示した。入国者数上限撤廃や個人旅行解禁、査証(ビザ)免除を検討している。
FNNによると、岸田文雄首相が早ければ今週にも大幅緩和策の実施について判断する見通し。
政府は7日から入国者数上限を1日2万人から5万人に引き上げ、全ての国から添乗員なしのパッケージツアー受け入れを始めた。日本政府観光局によると、昨年の訪日外客数は24万5900人でコロナ感染拡大前だった2019年の約3190万人に遠く及ばない。
訪日外国人の消費額から日本人が海外で消費した額を引いた旅行収支は、コロナ感染拡大が本格化する前の20年1月に黒字額が3000億円に迫るなど、経常収支の押し上げに寄与していた。今年7月は39億円の黒字だった。
住友生命保険運用企画部の武藤弘明エコノミストは「入国者数の上限撤廃は、外国人旅行者の増加によるサービス収支の改善を通じ経常収支の改善に寄与すると期待され、一本調子の円安に歯止めをかける要因になり得る」との見方を示した。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストも、円安にはメリットとデメリットがあるが日本はインバウンド(訪日客)が停止状態だったため、輸入物価高騰による個人消費への下押し効果というデメリットしか受けていなかったと指摘。訪日外国人の消費を後押しするというメリットが再び現れることで「素直に経済にとってはプラスとみている」と分析している。
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著者:広川高史、氏兼敬子
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