統一教会の日本人女性が「韓国男性に尽くす」謎 韓国農村部の独身男性を結婚勧誘で布教

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――離婚、脱会して日本に戻れば楽になるのではないかと考えてしまいます。

先ほど韓国での暮らしが自己実現になったのではないかと言いました。もう少し別の視点からいえば、女性としての存在意義を見いだせたという点も、韓国での結婚生活にあると感じました。

聞き取り調査をした日本人女性信者たちは、日本で暮らしていた時代、およそ結婚に夢や希望がなく、仕事でも「女は損」だと感じることが多かったことがうかがわれました。

彼女たちの多くが1960年代生まれで、1986年の男女雇用機会均等法が施行された前後に社会人になっています。法の施行で性別に関係なく働けると期待したはずが、会社ではやはり男性の下におかれ、働き続けるためには妊娠や出産も歓迎されない。専業主婦の母親を見ても、家族からは「家事をやって当たり前」としか思われない。そんなことで「女は損」だと感じていたのでしょう。

身体が女性であることにより、セクハラの対象にもなりうる。労働力としては「女性であること」が歓迎されないのに、身体は性的対象にされてしまう。女性であることを否定的に捉えるしかなかった彼女たちにとって、たまたま出会ったのが統一教会でした。

入信・結婚生活が女性としての肯定感に

――女性として生きる道を統一教会が提供してくれたと。

統一教会での結婚はたんなる結婚ではなく、「地上天国」実現のためにあると述べました。男女は結婚して夫婦になってこそ完成した存在とされるので、男女に優劣はないとされます。出産や子育ては「神の子」を産み育てるという宗教実践。女性であることに積極的な意味を見いだせなかった彼女たちが、入信し、祝福を経て結婚生活を送ることで女性であることを肯定的に捉えられるようになったのです。

日韓関係の不幸な歴史がなければ、統一教会が日本をエバ国家、韓国をアダム国家と位置づけして日本に贖罪を求めることはできなかったでしょう。日本人女性が韓国人男性のもとに嫁いで夫や夫の家族に尽くして贖罪しなさいという統一教会の教えも成り立たなかったと思います。

韓日祝福だけではありません。霊感商法や高額な献金の問題も、背景には、エバ国家日本のお金をアダム国家韓国に差し出すのは当たり前だという歴史問題に根ざした教義があります。日本における統一教会問題は、日韓関係の不幸な歴史が根底にあると言っても過言ではないのです。

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野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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