統一教会の日本人女性が「韓国男性に尽くす」謎 韓国農村部の独身男性を結婚勧誘で布教

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――つまり、韓国が抱える社会問題に目を付けたと。

韓国は朴正熙政権下(1963年―1979年)に「漢江の奇跡」と呼ばれる急速な経済成長を遂げました。都市部では所得が増え、生活水準が上がりましたが、地方の農村は経済成長から取り残され、都市と農村の経済格差が顕著になりました。

韓国農村部にある統一教会の施設(写真:中西氏提供)

とくに1975年頃から農村から都市部への人口流出が進み、とくに結婚適齢期女性の流出が結婚適齢期男性より多かったようです。そこで生じたのが農村男性の結婚難です。

農村男性の結婚難が社会問題として表出した時期と、統一教会の韓日祝福が本格化していった時期は、ほぼ軌を一にしています。

「地上天国」実現のための結婚

――「理想的な結婚」ではなくても、日本人妻たちが異国での生活を継続できているのはどうしてでしょう。

なかには信仰を失い離婚、脱会して日本に帰国する女性もいますが、信仰を失わず、苦労の多い生活をしながらも韓国で暮らし続けている女性もいます。経済的に厳しい生活、信仰のない夫、それにもかかわらず、なぜ信仰を続け、韓国での生活を続けていけるのかは、そこに自己実現といえるようなものを見いだしたのだろうと思います。

彼女たちにとって統一教会の結婚は、理想世界「地上天国」実現のための結婚であり、世界平和への道と思われたのだろうと思います。統一教会の教えでは私たちはサタンの血統をもち、この世はサタンに支配された世界です。合同結婚式で結婚した夫婦から生まれる子どもは神の血統をもった無原罪の「神の子」とされます。「神の子」が子々孫々産み増えることにより、やがて「地上天国」が実現されると信じられています。

ですから彼女たちにとって韓国での結婚生活は「地上天国」実現のための社会変革運動と言えます。理想世界の実現のための結婚ですから、夫は「神の子」を産むために必要なだけであり、恋愛感情はなくても構わない。実生活では夫や夫の家族に尽くすことによって植民地支配の贖罪になる。韓国人男性と結婚することで家庭の中では国境を越え、子どもは生まれながらにして国境を越えている。家庭の中がささやかな「地上天国」になるのです。

次ページ植民地支配の「罪滅ぼしで来ている」
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