ブックオフ「こだわり皆無な売場」が逆に新しい訳 ネット社会で感じる「オススメしてこない魅力」

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奇書?『ブックオフ大学ぶらぶら学部』

2020年に発売された『ブックオフ大学ぶらぶら学部』(夏葉社)には、そんな「意図のなさ」が生み出す「居場所」としてのブックオフの魅力が存分に書かれている。

この本は、「大学」と命名されていることからもわかるとおり、ブックオフから多くのことを学んだと自負する著者たちが、ブックオフの思い出を語ったエッセイ集である。

著者には、前出の武田氏をはじめ、個人書店の店主など、さまざまな人が名を連ねている。この本は発売と同時に大きな反響を呼び、小さな出版社からの出版物だったにもかかわらず、2000部がすぐに売り切れた。新装版も発売され、全国のブックオフ好きの注目を集めた1冊だ。

このエッセイ集で目立つ言葉が「ブックオフこそ、私たちの居場所だった」という記述である。

実際、同書の版元の社長で、この本に寄稿もしている島田潤一郎氏は、そのインタビューの中で「僕は孤独なときや暗い時期にブックオフに救われたんですよ。決してウキウキしながら行っていたわけじゃないけれど……心の拠りどころでした。僕みたいに『ブックオフしか行くところがない』という人は今も全国にいると思うので、そういう人に読んでほしい」と語っている。

『ブックオフ大学ぶらぶら学部』だけではない。本連載初回で対談した、三宅香帆氏のエッセイ『それを読むたび思い出す』(青土社)の中にも同じような言葉が書かれている。

「ぼーっとブックオフの本棚を見ると、心がすっと軽くなった。もし読みたいものが見つかれば、文庫本を買った。買わなくても漫画を立ち読みした。たいして面白くない漫画でも、新しいものを読めるだけで、憂鬱が晴れた。10代の息苦しいときに誰より自分を救ってくれたのはブックオフだった」
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