「在宅勤務」有無で株式パフォーマンスに決定的差 出社に戻る流れだが、在宅勤務は良かったのか
しかし足元の、コロナ禍から回復していく状況で、再び、コロナ禍以前の在宅勤務を認めない形態に戻す企業もあるかもしれません。今回の分析は、事業戦略のひとつとして“能動的”に在宅勤務制度を取り入れた企業が、どの程度の株式パフォーマンスとなったかを観察の目的とします。
そのため在宅勤務制度があるか、そうでないかの企業の分類はコロナ禍前の2019年度(2020年3月期)までとしました。また、株式パフォーマンスは3年間で計測しました。
図の中で2019年は11.9%となっています。これはコロナ禍となる直前の2019年度(2020年3月までの1年間)に在宅勤務制度がある企業のほうが、ない企業と比べて2021年度までの3年後(2022年3月まで)で株式投資収益率が平均して11.9%上回ったということを示します。
今回の分析では、例えば業界の違いなどは考慮にいれていません。顧客と直接接する必要がある企業の多くは、在宅勤務制度が取り入れ難いものです。例えば外食産業で接客の必要があるスタッフは在宅勤務ができないのですが、コロナ禍ではこのような業界は営業自粛が行われたことで、業績も厳しくなり株価も下落しました。在宅勤務制度がない企業の株式パフォーマンスが劣後したのは、このような影響も背景にあるでしょう。
在宅勤務制度“あり”だと好パフォーマンスなワケ
しかし、それだけが理由とは言えません。コロナ禍前に在宅勤務制度を取り入れている企業は、コロナ禍で政府の要請にもスムーズな対応が可能です。このように企業のシステムが優れていることも、その後の市場での評価につながり、株式パフォーマンスが優位となった理由となるでしょう。
そして、こうしたコロナ禍の期間だけでなく、それ以前も在宅勤務制度がある企業のパフォーマンスが優位であったことは注目されます。2012年度からそれぞれの年で見て、その年を含んだ3年後までの株式パフォーマンスについて見ると、8年度のうち6回、在宅勤務制度が“あり”の企業が上回りました。
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