年金を一番トクにもらう「夫婦の年齢差の法則」 配偶者手当「加給年金」をどう受け取るかがカギ

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先に夫婦での年金戦略を考えたとき、夫の老齢基礎年金も老齢厚生年金も含めて、まずは、「すべての年金の受給開始を70歳まで繰り下げることを検討するのがセオリー」と書いたが、夫65歳、妻60歳というように、夫婦に一定の年齢差(妻が年下)があるなら、「夫婦そろって繰り下げ受給」ではなく、夫の老齢厚生年金の受給を繰り下げずに、加給年金を受け取る選択をしたほうが、夫婦で受け取る年金額を増やすことができる可能性が高くなる。

夫婦で一番トクする「夫婦の年齢差の法則」

すると、気になるのは「一定の年齢差」がいったい何歳差なのかということ。どのくらいの年齢差があるときには加給年金を選び、いくつまでの年齢差なら繰り下げ受給を選んだほうがいいのか、その損益分岐点を探れば、年金を一番トクにもらうための「夫婦の年齢差の法則」が見えてくる。

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考えるポイントは、夫の老齢厚生年金を繰り下げたことで、本来はもらえるはずだった加給年金がもらえなくなるが、その「損失」を(夫の)老齢厚生年金の繰り下げによる「増額分」で埋め合わせできるのは何年後か、ということ。

仮に95歳以上にならないと埋め合わせができないのであれば、そこまで長く生きられるかどうかわからないので、老齢厚生年金を繰り下げずに加給年金をもらうべきと判断できるし、反対に75歳にならないうちに追いつくのであれば、加給年金を受け取らずに、繰り下げ増額を選択したほうがいいという判断ができる。

その視点で、3歳差、5歳差、8歳以上の年齢差の夫婦でシミュレーションをしてみた。結論からいうと、3歳差の夫婦であれば加給年金を受け取らずに繰り下げたほうがおトク、5歳差は微妙だが夫婦そろって元気なうちにより多くの年金を受け取りたいという考えであれば加給年金を受け取ったほうがベターといえる。8歳以上の年齢差のある夫婦なら、迷わず加給年金を受け取ったほうが、夫婦そろって生涯にわたって受け取る年金の総額をもっとも多くすることができる。

増田 豊 社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士

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ますだ ゆたか / Yutaka Masuda

増田社会保険労務士事務所所長。社会保険労務士・2級ファイナンシャルプランニング技能士。1968年島根県隠岐の島生まれ。1991年に慶應義塾大学商学部を卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。2001年から2年間、東京商工会議所産業政策部に出向し、年金制度改革などの政策提言活動に関わる。2021年にANAを早期退職し、同年9月に増田社会保険労務士事務所を開業。年金相談や企業の人事制度構築、人材研修などに携わっている。

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